だらだら坂の老大木

 

 だらだら坂が続く

 駅までの 長い道

 老大木は 冬の間

 黙って 死んだように

 眠っている

 春が来ると、枯れていた

 老大木は、眠たそうに  

眼をこすりながら 

あくびをする と

温かな風が ふわり

渇き切っているはずの

枝から ぷっくりと

小さな、若い芽が吹き

だんだんと

葉を広げ始める

生きているのを

誇示するかのように

豊な緑の大屋根を

揺らしながら

私を待っている

だらだら坂が続く

夏の炎天下 路面は

焼けるように 暑い

老大木の そこだけが

影を作って 私を包む

やがて 老大木は

夏の頑張りに疲れ果て

秋風に 助けられて

重くなった衣を脱ぎさる

眠りの 準備に余念がない

だらだら坂道が続く

木枯らしが 

枯れ葉を追いやる頃

老大木は 寒いよ、と

裸を 抱いて眠りにつく