おとうとhttp://www.ototo-movie.jp/
山田洋次監督の最新映画作品「おとうと」を観た。朝一で、友人と待ち合わせで、梅田のピカデリーについたのは、10時20分前だった。
ええ?なによ。この長い列。平日の朝一は、がらがらだと思っていた。
「何で並んでいるのですか?」聞くと、チケットを交換するのだという。
「じゃ、私は、チケット売り場に並びます。」というと、
「皆ここで順番です。」
わかった。新聞屋さんのチケットが出ているのだ。「 要求すれば、もらえるよ。こちらから言わないとくれないわ。」と妹から聞いていた。
温泉や、映画、演劇などのチケットを、新聞屋さんは、勧誘用にサービスとして配るのだそう。
優待チケットを持っている人ばかりではなく、チケットを買うのに並んでいる人も多かった。
売り場の窓口に来たら、端席が残っているだけ。満員だ。
鶴瓶が演ずる、弟は、名演技だった。結婚式にやってきて、禁じられた酒に手を出し、一人暴れ、一人芝居を披露するくだりは、見事。この人、本当に旨いなあ、と関心する。 美しくて、聡明な姉(吉永小百合)と、似ても似つかない顔をした弟、に、ギャップを感じる。これが兄妹?ではないでしょう。が、そこは作り物だから、こんなお姉さんいたらいいなあ、になる。
見終わって、泣いてしまったね、なんて食事をしながら、話士の中で、
この弟、死んだから、感動ものだけど、いつまでも生きていたら、たまらないよ、と友人が言う。
この映画の舞台である、大阪の通天閣が見えるあたり、釜が崎も含めて?が出てくる。 大阪府と大阪市の統合構想を、橋本さんが打ち出していると いう放送で、なんと、大阪は、7人に一人が生活保護を受けているという。この映画の中で、弟は体中癌に侵され、緑の家、という民間ホスピスに迎えられ、入居している。費用を尋ねる姉に、家の代表者が、生活保護の手続きが出来て、費用はそこから捻出出来ていると言う。
山田洋次は、こういう社会問題も見逃さないのだなあ。
NHKの「無縁社会」の中で、監獄にいる受刑者に高齢者の増大と現状を取り上げていた。中には、おしめを必要な、要介護者も出ている。高齢の受刑者が、要介護の重受刑者の手押し車を押している。
監獄を出ても、舞い戻って、来る。行き場がなく、生活が出来なからだ。
出所後、生活保護の申請を世話し、受け入れの施設を探して奔走している支援団体がいる。、施設に入ることの出きた幸運な老人がいた。17人中、二人だという現状。
涙ながらに、こんな幸せなことはない、有り難いと手を合わせ、身体を震わせて感謝する、元受刑者。
こういう話が、この「弟」という映画の舞台、「緑の家 」での支援者の仕事ぶり、優しさ、とオーバー、ラップして見えてくる。
社会で、不自由なく生きている人達、学校で勉強が出来た、賢い人達、彼らが難なく育っているのは、家庭という小さな社会の中で、弱者(弟のような)を知らずのうちに、気づかずのうちに、傷つけ、踏み台にして、成長してきたからだ、という、「問題提起」がこの映画の中で、なされている。
ユーモアをたっぷり提供しながら、考えさせる。山田洋二監督の映画の、質の高さ、優しさ、暖かさ、が、この映画の中にも一杯詰まっている。