敬老の日

 

   

   

 おばあちゃんは、宇宙人になりました。

谷川俊太郎の詩の一節です。

母を思うとき

その通りだと納得します。

母とのコミュニケーションが

どうして出来なくなったのだろうと

今でも不思議なのですし、

考え始めると悲しくなるのです

けれど、宇宙人になってしまった

と思えば、それなりの

コミュニケーションが成り立つわけで

滑稽で、楽しかったり、

ガラス窓を通して見えるとき、

キラキラ輝いてるのです

敬老の日、私はいつもと同じように

母の施設に行くのですが

やはり 敬老の日  ですから

よそ行きのプレゼントを持って

でかけて行きました。

あら、施設の中に 沢山の子供達

いつもは、しんと静まりかえって

寂しいのですが、敬老の日なので、

孫かひ孫か

小さな子供から、普通の子供まで

お母さんたちと、なかにはお父さん

と思っていましたら

ボランティアのキッズコーラスです。

歌が終わって、これからお茶の時間です。

「とても素敵な笑顔でしたよ。」

洗面で手洗いをしていると、

後ろから母の様子を話してくださる声

 「いつも母の笑顔に癒されます」、と言ってくださる

お風呂のお世話をしてくださる方

ダイニングには、お年寄りとお年寄りの間に

可愛い子供たちが座っていて、

お婆ちゃん達は、孫のように、世話をやき

これ食べなさい。

これ気を付けて飲むのよ。

母は、私にきがついて

「可愛いわね。可愛いわね。ほんと可愛いわね。」

地球に里帰り

満面の笑顔で、雲が抜けたみたいに

頭も冴えわたって、青空が一杯

どのおばあちゃんも、

あたまのクレバーなおばあちゃん

宇宙人になりかけのおばちゃん

すっかり宇宙人のおばあちゃん

縫いぐるみを抱いたおばあちゃん

タオルを抱いたおじいちゃん

遠くのテーブルに一人座っているおじいちゃん

時々叫びだす おばあちゃん

みんな、みんな 子供達に 気を取られて

子供たちの,純粋で真っ直ぐな反応に

心を奪われている

嬉しいわね、良かったね

またずっと来てほしいわね

でも、でもね

この子供達の、

おばあちゃんが おじいちゃんが

敬老の日だから

来てくれるかな、会いたいな

期待を込めて 待っている

これから飛んで行くのかな

お父さんとお母さんの宇宙船に

乗って