スーツケース

 ペルシャブルー

私の記憶もいいかげんなものです。ニューヨークのデパートで、こんなのがほしいのよ、と何度も見ていた、サムソナイトの「キャリー、イージー」というスーツケース。

 ディスカウントデパートで、340ドルバリューの、145ドルで売っていた。

 これも買って、パリから持ち帰ったのを置いて帰ろうかとまで考えていたりした。

 家に帰って、スーツケースを片付けるのに、ニューオリンズのカメラ店で、スーツケースほしさに、オリンピアというビデオカメラを買ってしまった時に、手に入れた、サムソナイトのまがいもの?と疑っていたスーツケースと同じものだった。

スーツケースが並んでいる店に入って、持ち上げると軽いし、動きも良い、サムソナイトのスーツケースがあって、

 幾ら?と聞くと、

145ドル、と言われた。デパートと同じ価額だった。

 

これを買えば、そのスーツケースも無料で。最初は1400ドルのビデオカメラを800ドルにすると言われ、いらないと突っぱねて、スーツケースだけほしいと言ったら、

 店の人は、半ば怒って、80ドルで持ってけ、と言い出した。

 私は大喜びで、80ドルで買うつもりだったのに、店の主人は、

 「このビデオを550ドルにするから、スーツケースもつけて。」あれもつけて、これもつけて、と一生懸命。欲にかられて、ついに、550ドルで、ビデオカメラを買ってしまった。あんときに、スーツケースは、本物のサムソナイトだったのか?。

 ニューヨークで買って来なくて、良かった。

 息子から、ケチをつけられた、赤いスーツケースは、これはこれで、なかなかのもの

 なのだ。

 幾ら重くても、引き歩く時に、効力を発揮する。駒が大きくて、音がしないで靜かで、少々のでこぼこ道でもスムーズに動く。

 2つだけの車輪なので、360度の自由自在ではないから、改札を通る時に、細い所だと、つかえる心配があるので、そんな時は、持ち上げないといけないけれど。

 昔、サムソナイトの軽いものを買って、それはヨーロッパ中を率い回って、バス亭から遠い、ユースホステルに引き回った。ヨーロッパだけではなく、アメリカにも行った。ごろごろ道や、石畳になると、もう悲鳴をあげたくなる。

間に食い込んで、動けない。安定が悪くて、ふらふらするので、それを修正しながら歩くので、手首が痛くなる。

 そのスーツケースの駒が壊れて、修理に出した。」当時6000円の修理費だった。

スーツケースは、結構高かった。軽くて、私と旅の苦楽を共にしているので、これはなくてはならないから、と修理にだしたのだけど、修理から帰ってからは物置番になっている。

無印のスーツケースを半額バーゲンで買った。荷物の入り具合は、サムソナイトとほぼ同じ、4輪駆動のもので、ずっと楽に使えるようになった。そうなれば、サムソナイトが使えなくなってしまって。

 団体旅行をする人は、荷物の移動に頭を悩ますことはない。タクシーを気軽に使える人は、関係ない。

 でも、私のような、貧乏旅行をする人間にとっては、荷物をどう扱うかは大問題

 なのだ。バックパッカーと言って、大きなリュックサックを背中にかかえて、旅している人達のような体力はない。

 軽くて、容量があるていどあって、使いやすいスーツケースは、旅をささえる、なくてはならない必需品のだ。