キャタピラー

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キャタピラー」は、予告編で見ると、目を奪いたくなるような、シーンがあって、見たいけれど、気分が悪くなるのでは、と躊躇する映画ですが、8月からロングラン、平日にもかかわらず、満席状態でした。

 この映画は、本当にお金をかけていないのが良くわかります。それでいて、最大限の効果で、戦争の実態を、戦争の愚劣さを、真っ向から、観客につきつけてきます。

 映画の始まりは、炎の中、抵抗する女達を、暴力で犯し、殺すシーンから始まります。 衝撃的なシーンから、一転して、のどかな田園の風景が広がる田舎の家に、手足のない顔がケロイド状態の、夫が、運ばれてくる。夫はお国の為に立派に戦った「軍神」として

勲章を3つももらい、「軍神」として祭り上げられた。

 国民は、ラジオから流れる虚偽の放送を信じて、歓声をあげる。「軍神」と呼ばれる

夫は、暴力的で、性欲が強く、戦争に行く前は、妻を殴り、子供が生めない女だとののしり、妻は飯炊きと、夫の性欲を満たす道具のような存在だった。

帰って来た「軍神」は、以前と変わらない。妻は、手足のない夫に、我慢しきれずに、暴力を加え、憎しみをぶつける。

 無抵抗の夫は、妻から暴力を受けることで、自分が犯した女達、殺した女達の恐怖感、焼かれる恐怖から、逃れることが出来なくなり、自虐的になり、性を失う。

軍神は、芋虫と化し、食べて、寝て、食べて、寝て、食べて、寝て。

 戦争は、人間が、人間に対して、人間で有るが故に、起こる現実だ。それだけに、自分の問題としての怖さを、見つめ直してほしい、観客に問題提起している。

 戦争の愚劣さ、誘導される国民の無知、権力の操作、戦争とは、欲望の果ての殺し合い。

 

 原爆で焼かれ、ギロチンにかけられ、アジアで無数の人の命が奪われた。

人間は、賢くなれないのか。日本は、関東大震災で、原爆を投下され、焼かれて、死んでいった人々の実態を教訓に出来ないのか。