食い意地

 

「懲りずに、また来てくださいね。」

イタリアンレストランの女店主が、送りに出てきた。

ついで、ご主人であるシェフが出てきて、

「ありがとうございました。」と丁寧な見送り。

「しばらくいかなかったからかしら。」

と言っても、3ヶ月にはなっていない。

「常連さんなら、月に一度くらい足を運ぶのかも」

店内が空いていたわけではない。何組かのカップルが

カウンターにいて、店は繁盛していそうにみえた。

浮気していたことは確かだ。

新しい、イタリアンレストランを見つけて、昼食に一度行った。

初天神あたりの、小料理屋に、2度ほど。

いつも、そのイタリアンにいくつもりが、途中で脱線した結果である。

江戸っ子なら、行きつけの店以外には行かないだろうが、関西人、いえ、大阪で育った人間は、好奇心が強くて、安くて旨い店はないか、浮気っぽくて、いい加減なのだ。

 そのどの店も、魅力的で、また行きたい店ばかり。でも予算と時間は限られる。

懲りずに、と言われる由縁はそこにある。

 しかも、イタリアンは、若い人には、良いけれど、好きだからといって、そうそう食べるわけにはいかない。カロリーがすごい。麺類が多くなる。ワインを飲み過ぎる。

 久しぶりにイタリアン、バランス無視で選んだら、前菜の盛り合わせは別として、あとは、全て麺類ばかり。ウニのパスタと、芝エビとハーブのピザ。

最初に出てくる、パンも美味しいから、残さない。麺とワインでお腹が満腹。

 「今日はお料理は、少ないですけれど、ワインを1本半ほどの飲まれましたよ。」

女主人が、グランワインの、総量を計算して言った。

白から赤に、赤から白に、料理に合うワインをグラスで飲むのも、楽しみ。

 これも、好奇心の強さの現れか?

 カウンターから離れて、美味しそうな生ハムが目に入った。

「生ハムが美味しそう。」私が言うと、

「1枚でも2枚でも切りましたのに。これは特別美味しい生ハムです。」

残念。これを食べずして、帰るのは、後ろ髪が引かれる。

食いしん坊の私、これからずっと、生ハムに心を残したままなのだ。

 もう一度、近いうちに行かないと、気がおさまらないのかなあ。