パリと日本

 

 気まぐれなパリは、馬鹿陽気に汗ばむ日でも、時間と共に、急激に寒くなったり。

 日向と日陰の温度差も激しい。

ここ二日、Tシャツで過ごせるアパートの中も、肌寒いほど。

 ロンドンに1週間滞在するので、手洗いで、持って行く衣服などを洗った。洗濯機にかけると、1時間半もかかるし、それほど長くかかるということは、衣服の傷みが半端ではないのではと心配になる。

ユニクロヒートテックを持ってきて良かった。暖かいし、洗うのも簡単。上に少しおしゃれな服を重ねればよい。

 レインコートの下に、ミズノの薄いダウンを入れれば、寒さもしのげるだろう。

今は、比較的分厚いコートの下に、その黒いダウンを入れて、歩いている。冬装束と一緒だ。

 町ゆく人々も、ダウンや分厚いコートに身を包み、寒そうだ。来た日の、陽気には、半袖の人もいたというのに。夏服を、なんて考えていた。

 ロンドンのホテルは、結局、ユースホステルと、ウィンブルドンのホテルを2泊、今の所、確保している。その作業などで、昨日は夕方の5時まで、部屋にいた。

 一昨日の夜、ワインを飲んで、お腹いっぱいになって、シャワーを浴びていたら、突然、ヘッドとホースが外れた。酔っているので、なんだかわからずに、えらいこっちゃ、の一点張りで、アパートの持ち主である友人にメールを出した。ホースをヘッドに突っ込もうとしても入らなかった。

 昨日の朝、返事が来ていて、単に、ヘッドとホースが外れたのなら、付け直したら良い、と書いていた。

 外して付け替えた、と書いている。そうか、外して入れ直すことができるのだ。

 道具を探し、不器用な私が、なんとか、元通りにできた。水圧で、外れたのだろう。ビニールテープで、しっかりと、止めておかないと、また外れる可能性がある。 白いテープがないので、とりあえずは黒いテープをしっかり巻いた。

 問題が解決すると、一仕事やりおえたように、爽快な気分。彼女には、心配かけて申しなかった。

 夕方、アパートを出て、ベルシーあたりを散歩するつもりだった。

従姉妹のレストランを覗くと、彼女は、大きなバケツにドリルで穴をあけている。

店の外の植物はどれも、よく育っている。オリーブの木が3本、ゆらゆら風邪に揺れ、

EDという低所得者層に好評なスーパーで買ってきたというチューリップが、2週間で花を咲かせている。

 同じ建物に住んでいるフランス人の女性がやってきて、従姉妹の植物について、二人で話し始めた。

 喧嘩しているのか、と思われるほど、荒いもの言い。それで普通の会話なのだ。

日本では、けんか腰のようにしか思えない、激しいやりとり。そういう会話を楽しんでいる。それがフランス人のようだ。

 植物の育ちは、手がける人の愛情にかかっている。従姉妹は、声をかけたり、たたいたりしているそうで、動物の飼い方と同じ方法。

 ゆでエビと、ワインをご馳走になって、話をしているうちに、9時近くになってしまった。彼女はワインを飲まないので、客に出すワインの味見をしてほしいと言って、開けてくれた。あとの残りは料理に使うのだろう。

 お好み焼きを初めて、好評だそう。フランス人がお好み焼きを好んで注文するとは。

前菜付きのお好み焼き。立派な定食に。一人で、よくやれるものだ。

 日曜大工で、室内の改装から、タイル貼り、水道工事まで、一人でやった。

職人なら、できる仕事だから、できないわけではないかもしれないけれど、すごい。

 友人のアパートも、息子さんと二人で改装した。どちらもすごいなあ、と感心。

 吉田さんにしても、ドイツの友人にしても、画家は皆、皆、メチエ(職人)に違いない。

 従姉妹は、そろそろレストランに飽きが来た、という。5年目に突入している。

お金を貯めて、日本にアパートを買うつもりのよう。日本とパリを行き来する生活になるだろう、と。

 日本に帰ると、フランスが、フランスにいると、日本に、心が移ろう。どちらにも、定住できなくなるのだが、その解決は、動けない事で解決する。

 永住する先は、日本人なら、日本なのだろう。望郷の念を持ちながら、異国の地で果てた人達も、埋葬される頭は、日本に向けてほしい、と願った。日本に帰りたくても、金銭的な理由や、そこで作られた家族との関係、政治的な問題など、帰れない人達。

 従姉妹のレストランを出ると、街灯がともり始めている。セーヌ川沿いを歩くつもりで、少し歩いたが、寒いので、ぐるっとそのあたりを回って、モノプリ(スーパー)に行った。10時の閉店前なので、客は少ない。

 生ハムが買いたかったが、ロンドンから帰ってからに。トルコのいちじくを買って、帰った。モノプリのいちじくは、日本で買うものよりも甘さが少なかった。