忘年会

 

毎年、友人が自宅で開く忘年会で、ある人が、ある人に、おもしろい質問を投げかけた。

その会に集まる人達は、20年来、顔を合わせて、それぞれ、うんちくを述べて、異見を闘わせては

楽しんでいる。

 20年、変わらないで、同じ渦を巻きながら、非社会的生活をエンジョイしている男性に、生きる目的、

この20年間で、得た結論は何か、さっぱり見えてこない、なんなんですか、と年長の建築家が質問。

質問を受けた男性は、普通の人々には、理解不能な、宇宙的受け応えで対応している。

 平和だなあ、と思う。この家に集まる人達は、美味しい料理にワイン付きで、好き放題に語り、酔い、

居心地の良い、柔らかなソファーに身を沈め、毎年、変わらない、話題、変わらない、いこじさ、我儘を、

何の違和感もなく,享受しあえる。

 変人の集まりだ、と主催者は言うけれど、ひとえに、彼女あってのこと。岡山から5キロの牡蠣を直送で仕入れ、生帆立て、ムール貝、エビに、メインのワイン煮込み用の鳥にパンにいたるまで、妥協しない特別注文品、庶民の生活者には、出費が大きすぎると思う。特別な生活と、豊かな愛情のたまもの。彼女のお料理を楽しみにやってくる、と招かれし、人達に称賛されると、益々エスカレートしてしまうのでは?

この中で、一番、この集まりを楽しみにして、

彼女に甘えているのは、その質問を投げかけ、投げかけられた二人かもしれない。

 

 外では、年越しが出来ない、人達が、炊き出しの長い列に、並んで待っている。毎年、増え続ける自殺者。サロンに参加していた人の中から、来られなくなった人も幾人かおられる。

そういう現実があって、この集まり、これらの会話、この変わらない、サロンでの楽しい時間は、奇跡に違いない。