あんぱん

 

母に会いに行くときに、よくあんパンを持って行く。ミニあんパンが5つ入っているので、二袋持って行くと、施設の人達でわけて食べてもらうのに丁度良い。私の金銭的負担も少なくて助かる。

 昨日も、あんパンを持って行った。すでにお三時は終わっていたので、夜にでも出してくださいとお願いした。

職員が、「皆、あんぱんを出して、あんぱんが食べたいと言うのです。」

 先日は、お三時の前だったので、三時のおやつは、あんぱんが出された。皆さん、美味しい、美味しいと言って喜んでもらえた。やわらかくて、あんがしっかり詰まっているので、食べやすい。一つづつでは、まだ足りないようで、職員が、のこったパンをちぎって、それぞれのお皿に配っていた。

 あんぱんは、パンの傑作だと思う。日本で、最初にあんぱんを作ったのは、銀座の「木村屋」今でも、木村屋のあんぱんを求めて、時間帯によっては、銀座の店に行列が出来てる。日本のあん餅の皮を、パン生地に変えたのが、あんぱんだ。

 甘いもの好きの従姉妹が、パリで、木村屋のあんぱんが帰るようになったと、嬉しそうに言っていた時、甘いものに興味のない私は、それがどういうことなのか、理解できなかったけれど、無類のアン好き、羊羹は一本食べてしまうような人には、日本から、遠く離れて暮らし、毎日バケットを食べていて、キムラヤのあんぱんを口にした時の喜びは、大変なものだったにちがいない。

 あんぱんは、おにぎりのようなもの。子供の頃の、お母さんの優しさ、ぬくもりに似ている。

子供の世界に戻りつつある、老人達が、美味しそうに、あんぱんを食べている。手助けがなければ、まともに食事が出来ない人も、ミニあんぱんなら、手につかんで、上手に口に運んでいる。

 待っていてね。また買ってくるわね。私の喜びになっている。