猫の埋葬

 晴れている時の公園

 サンフランシスコから帰った、その夜は、ぐっすり寝てしまった。二人はすでに起きて、朝食の準備をしていた。

「何時?」

「10時過ぎ。」

「え、そんな時間?」

子供は、金曜日からパパの所で過ごすので、週末は、二人。息子は、週末を楽しみにしている。金曜日はマンハッタンで外食することに決まっているらしい。

 朝食は息子が張り切って台所煮立つ。持って行ったソーセージとこだわりの目玉焼きを作る。 みそ汁は、インスタント、タマネギのスライスは、ガールフレンド、息子は、卵を買いに行って、チコリとオクラも買って来た。 オクラを湯がいて、私がサラダを造る。

 夕方、ステーキハウスに予約を入れてくれている。ピータールーガー、この前美味しかった店で、なかなか予約の取れない店。 

 それまで、たまった洗濯をして、飛行試験の勉強をするらしい。

メイン州時代から飼っていた、猫の骨を、近くの公園に埋めてやろうという。彼女に、土に返さないと成仏出来ないと言われたからという。メインにいた頃から飼っていた猫で、病気になると、何がなんでも助けてやると言って、随分お金も注ぎ込んだ。亡くなると、DNAを保存してもらい、火葬してもらって、御骨は手元置いていた。DNAは?と聞くと、会社がつぶれてしまったそうで、どこに消えたかわからない。

 公園は、枯れ葉が埋まり、雨が降っていた。骨壺を初めて開ける。ビニール袋の中に納められた骨は結構ある。メモリアルカードが添えてある。土を掘り、骨を埋めて、その上に枯れ葉で覆って、3人でしばらく黙祷。

 私が居るときに、埋葬出来たので、良かった、これから冬になって、雪に埋もれるから、ゆっくり眠る事が出来るだろう、と息子は気になっていた事を終えて、ほっとしたよう。あれだけお金を使って、なんとかしてやらないとと必死だったが、今となっては、可愛そうな事をしたと思っている。

 息子が、埋葬する気になったのは、新しい猫がやってっきたからだと思う。

 埋葬をすませ、息子達は洗濯をすませる。私はカレンダーを買いにメトロポリタンへ。3時半に、ベッドフォード駅の角で待ち合わせだと言われた。地下鉄で、一日券を買おうと思ったら、クレジットが使えない。で、レギュラーを買った。86駅で降り、いつもはバスに乗るのに、歩かないといけない。雨の中歩いて、美術館に入ると、 入館希望者でごったがえしている。4つのチケット売り場に長い列が出来ている。こんな光景を見たのは初めて。

 私は、トイレに行きたくて、チケットを買わずに、入った。普通は、止められるのに、あまりに混んでいるので、チェックも出来ない状態だ。トイレに入っても、これも一杯の人だった。トイレに並び、カレンダーを買うのに並んで、待ち合わせの時間に間に合うように、走りに走って、地下鉄駅に。ベッドフォードまで行くのに、マンハッタンを3時に出れば間に合うと言われていた。駅に着くと、7分前。雨で寒い日なので、待たせるわけにはいかないと、早めに着いた。指定された角で、待っていると、寒さで、手が凍りそうになる。待てども来ない。もう来るか、もう来るのでは?と雨の中にたたずんで待っていた。だんだん腹がたって来る。こんな所で、待たせて、来ないなんて、非常識だ。30分待って、通りの向こうを見に行き、戻った所に、ガールフレンドの声がした。

 トイレに行きたいのも我慢して、何度も帰ろうと思いながら、待ち続けて、堪忍袋の緒が切れた。彼女に不満爆発。

 二人は、車で来たのだという。余計に腹が立つ。もうレストランになど行きません。凍えそうで、風邪を引いたら、どうしよう。車でぬくぬくとやってきて、しかも30分も遅れて。ないがしろにするのもいいかげんにしろ。どうせ待っているだろうぐらいにしか考えていないのだから、と彼女に当たり散らしてしまった。

 息子は、バーで、ビールを注文して、待っていた。トイレに行っている間に、彼女は、泣いている。息子は、なんで彼女に当たるのか、と問いつめる。

 途中、事故があって、15分遅れただけで、私が待っているので、彼女を下ろして、探しに行ってもらったという。指定され場所は、車で来たので、ぐるぐる回って探して、、その場所がわからなかったらしい。

 「カフェにでも入って、覗いていたら良かったのに。」と息子は言う。「なんで彼女に当たるの?僕に怒ればいいのに、」と逆に怒られる始末。

 確かに、そうだとは思うが、もう後の祭り。二人はどっちでも、連帯責任だわ、と反論し、それでも彼女に当たるのはお門違い。彼女に謝って、ビールを飲んでいると、暖かくなってきた。皆動きたくなくて、ステーキハウスはキャンセルして、そのままそこでソーセージなどをビールのあてに食べていた。どのくらいそこにいたのか覚えていない。帰りは、彼女に運転してもらった。

疲れすぎて、酔いが回って、シャワーを先に使って、息子が冷蔵庫から、残り物だしてきて、ワインとそれらをまた食べて、寝てしまった。目覚めると12時、それからは、出かけるまで起きていた。