サンフランシスコの夜は更けて

 

 空港で夕日が見たいと言うと、案内役のおじいさんは、「それは無理だよ。霧が出るから。」と言った。

そうだ、シスコの霧は有名だ。「霧のサンフランシスコ」という言葉を思い出した。でも、おじいさんの予想に反して、快晴で、夕日が港の大橋を照らしている。鳥たちは、近寄っても平気で、動こうともしない。

サンフランシスコは、ドックが47ほどあって、そこに素敵なシーフードレストランの明かりが見える。

 昼の食事がまずかったので、夜は、空港のインタナショナルターミナルの入り口にある、「えびす」という名の寿司屋で、食べよう。

 7時に市内を出て、空港には8時前に着いた。見るところ、全然混んでなくて、閑散としている。早く着きすぎた。

まずは、寿司屋で、何を食べようか迷って、やはりいつも注文するカリフォルニアロールに決めた。キングカリフォルニアロールは、少し高いけれど、本物の蟹が使われているので、これを頼む。6個では物足りない。かといって、同じものも芸がない。ぐるっと、周りの店を見て回ったが、お腹が受け付けない感じなので、あきらめて、ゲートをくぐった。 

空港内のア^ト展示

ニューヨークまで、ワシントン乗り継ぎの飛行機、ビジネスは満席だったので、エコノミーで帰るつもりだったが、2日間の強行軍で疲れている。カウンターで、500マイルチケット(これは1万マイル飛ぶごとに4枚のチケットがおらえる)が何枚あるか聞くと、8枚になっていた。そのチケットを5枚使って、ビジネスにあげてほしいと頼んだら、満席でキャンセル待ちの人もいるから無理だと断られた。エコノミーは、UAのラウンジが使えない。それでも、プライオリティークラブのカードが通用すると書いているから、これを使うつもりで、ラウンジに行くと、これはインターナショナルにしか使えないと言われた。時間はたっぷりある。友和という寿司コーナーで、何か無いかと覗いたり、時間を持てあます

10時半の飛行機では、食事を買い込んでおいた方がよさそうだ。機内で食事を売るのは10時までだと機関誌で読んでいたから。アナウンスがあり、機内で食事を9ドルで売ってくれるというので、美味しそうだ

なと思った、サンドとサラダのコンポをかうつもりだだったのに、やめた。

 お腹がすっかり空いた頃、食事を頼むと、サンドイッチしかないという。ローストサンドを頼んだら、美味しくなさそうな、ビニールに包んだサンドを持ってきた。チップがついているだけ。ぱさぱさのひどいパンに、がしがしの乾ききったローストビーフ。ワインでもないと、とても食べられない代物だった。なんでこう運が悪いのか。そうではない。欲が深いからいけないのだ。美味しそうなサンドサラダよりも、もっと良いかもと期待したからいけない。機内で実質の料金で、一流シェフの、と機内誌で読んでいたのがいけなかった。

 機内では、隣が開いていると喜んだのもつかの間、ぎりぎりになって、黒人の大女が中に割り込んで入ってきた。彼女は分厚いコートを着たままで、両肘を両脇の手摺りに置いた。私の席まではみ出して、こちらは窮屈で仕方がない。首も肩もおかしくなりそうだ。 彼女はすっかり寝てしまい、益々身体はリラックスで横暴になる。私は、そっと突き出た肘とコートを向こうに少しでもずらそうとするが、一向に効果がない。

 そのような劣悪な環境でも、疲れていると、寝られるものだ。アイマスクと、耳栓をして、しばらく寝たようだった。

 シスコからワシントンまで5時間、そこから2時間待ちで、ニューヨークまで飛ぶ。安いチケットだから、こんなスケジュールになる。直行便に乗れないのか聞いたら、新しいチケットの購入が必要で、そういうのは、グッドチョイスではないと言われた。新たに買えば700ドルだとか。

 私が買ったチケットは20000円、その差は大きい。お金の節約には、若さと体力が要求される。私は老体にむち打って、若ものと張り合って、なんとい向こう見ずな。

 ワシントンのゲート近くに、ザガットに常連で毎年選ばれている、有名ハンバーガー店が出店している。どんな味だろう。並んで買ってみた。

「ミニバーガー。」と言うと、

「他には?」というので、

「いらない。」と答えた。

チケット番号をもらって、見上げると、トッピング無料と書いている。

つまり、他にのせてほしいものはないか?と聞かれたのだろう。

出来ていくハンバーガーには、確かに、トマトや、野菜、ピクルスなど美味しそうなものが乗っていく。しまったなあ。私のは肉を挟んで、マヨネーズもケチャップも何もついていなかった。

 ワシントンから、1時間余りではあるけれど、ウィンドー席に入って来たのは、映画「グリーンマイル」に出てきた、超能力の大男のようだった。なんでこう運が悪いの?もう。 やれやれ、やっとニューヨークまで帰ってきた。地下鉄のチケットがないので、第四ターミナルから、バスに乗れない。もったいないけど、エアートレインを使って、ジャマイカで地下鉄の一日券を買った。8ドル25セント。

 アパートに帰って、シャワーを浴び、買ったプレーンのハンバーグに、トマトとキュウリを挟み、マヨネーズをかけて食べた。肉の味が美味しい。ステーキと同じ味がする。ステーキ肉を刻んで、ハンバーグにしたような。

 残りは今日を入れて、二日しかない。でかけなくちゃ。寝てなんかいられない。