母の期日前投票

 

グループホームのすぐ隣に、市役所がある。母を訪問するついでに、期日前投票をしておこうと思った。施設にいる認知症患者の老人達は、明日の選挙に行くのだろうか、尋ねてみた。ヘルパーさんは、「さあ、どうでしょう。聞いてないですから、わかりません。」とのこと。

母の選挙通知は、弟の住所に転送されているはずだ。弟達が面会に来ているかなと思ったが、来ていないいとのこと。

母を散歩に連れ出したついでに、市役所で、投票をすませることに。

事前投票の申込書を書けば、葉書がなくても投票できるようになっている。母は何のことか、把握が出来ないようだった。けれど、母にだって、投票権はある。事前投票の理由に、「病気の為、付き添いがいるから。」という項目があった。代理で書類に記入して、順番を待った。

一人づつです、と言われて、母を先に送り出す。

「はがきを持って来ていないのですが。」と言うと、

「調べたらわかりますから。」とのことで、問題なかった。

議員名を書く紙をもらって、「好きな人の名前を書けばいいのよ。」と言った。母は前に書かれた名前の中から、好きな名前を選んで書いた。

次に、比例と裁判官の罷免書をもらう。係の人が、「書けますか。お手伝いしましょうか。」と声をかける。

「いえ、書けますから大丈夫です。」

耳の悪い母に、私の声が大きくなるので、係の人が笑っている。どこかおかしいのがわかっている。母の様子で、状態を良く把握できていないのがわかっている。

大きな声で、「ここに書いているでしょ。この中から、お母さんの好きな政党の名前を書いてね。」

母は、その中から、今度はきちっと自分の意思表示を書いた。自民党。昔馴染みはありがたいもの。

テレビに出てくる、麻生さんが好きなだ、と言っていたのは、今年の3,4月の頃。自民党支持者であることは変わらない。

個人名は、他党、比例は自民党

母は、一人で暮らしていた頃、選挙には、必ず投票に行っていた。それが国民の権利であり、義務だと。

ノンポリの私は、行くこともあり、行かないこともあって、母から「非国民」などと非難されたこともあった。

それほど真剣に、大切な投票権だから、母の権利が行使されたことで、私はほっとしている。