あの人に会いたい

  

  昨年3月

http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/building/news/20071012/512295/?ST=print 黒川紀章について

 昨日、NHKの「あの人に会いたい」は、建築家の黒川紀章だった。カザフスタン新首都計画は、建築家の死後、何十年先の完成を目指して今も建築途上にある。インタビューに応じている、黒川さんは、まだ若々しかった。

未来の人達に受け入れられる建築でなければならない。その為には、哲学がなければならない、と、黒川さんは、語っている。黒川紀章は、「共生」という精神を50年間貫いてきた建築家で、都市建築に力を注いで来た。

 黒川さんの「共生」とは、違いを違いとして認めながら、互いの共通点を見出して共に生きていこうという思想で、価値観を異にする人達、文化の違う人達、宗教の違う人達、様々な「衝突」「摩擦」を生み出し「戦争」によって、破壊しあい、殺しあって来た人達、が、その多様性を認めながら、共通の生き方が出来るような、そういう都市建築でなければ、建築家とは言えない、というのが黒川さんの主張だと思う。

吉田さんが、絵画に込めた哲学も、まさにそれである。吉田さんのライフワークは、「命」と「平和」。

 吉田さんも、事あるごとに、「人間は何故生きているのか?」「生かされていることへの感謝と、至らなさ(答えられない自分の至らなさ)」を仏壇に向かって、詫びながら、「少しでも近づけるように、力を与えてください。」と毎日祈っている、とおっしゃっていた。

神の使命、という言葉で表現されているのは、「平和」な世界の実現を目指して、努力すること。吉田さんはご自分を画家だとは一度もおっしゃったことはなく、「絵を描く」ことで、平和の実現、命の大切さを、絵画という表現形式を通して、見る人に「共感」を呼び起こす為に、日々、絶え間なく、働いておられた。

 吉田さんの絵が、50年後、100年後に、未来を生きる人々に迎えられ、必要とされ、魂の拠り所になり、平和への道を、人々が歩むことを願っておられた。そういう絵画でありたいと願っておられた。絵画に哲学がなければならない、と吉田さんがおっしゃっていたのは、そういう祈念からだった。

NHKの「この人に会いたい」を見て、「吉田さんに会いたい。」と思う。