オペラバスティーユ「仮面舞踏会」

   バスティーユオペラでは、「マクベス」と「仮面舞踏会」を公演している。どちらも、ベルディー作。「仮面舞踏会」19日に再演のこけら落としだったので、そのあとの週日を選んで行ってみた。2時間以上前に行くと、待っている人の数が5ユーロの50席には、まだ十分余裕がある。安心して、トイレに行き、帰ってくると、まだそれほど人数は増えていない。  去年並んだ頃は、風が冷たく吹き付ける中、我慢していたのにもかかわらず、買えないことがあった。わからずに、皆、機械の故障だと言われて待っていたら、すでに50席完売後だった。オペラ側のミスだったので、皆怒って帰って行った記憶がある。  今回は、寒くも無く、暑くもなく、気持ちの良い季節なので、待っていても全く苦にならない。1時間半前になると、チケット売り場の扉が開き、きっちりとした時間にチケット機械の前に案内してくれた。安心していたら、一人5枚くらい買っている人がいる。最低2枚、私のように、1枚の人はまれなのだ。気が気でなくなった。途中で切れる可能性だってある。  そのうちに、私の番が来て、まだ数枚残っていた。やれやれ。お札しかもってない人が、誰かかえてもらえないかと立ち往生していた。チケットはコインかクレジットでないと買えない。 館内のオブジエ  45分前になると入れてもらえる。その前で、じっと待っている人の中に加わって、一番前で待っていた。老婦人が、扉の間に、おしりを入れて、そこに座って、本を読んでいる。扉が開くと、一目産にに、3番扉に突進する。老婦人もダッシュするが、彼女はヒールなので、私に追いつけない。もう一人立って待っていた男性もダッシュ、立ち見席の、一番前の通路側を取るために。そこなら、立っていてもよく見えるし、暗くなって、空きがあると、すぐに移動できるからだ。3人は最前列を確保したものの、係の人がやってきて、この公演にかぎって、最初の25分間は、席を探してはいけないという案内が来た。隣にいる老婦人は、不満を隠さない。後ろの人が、「猫のように暗闇の中を探すのか?」と言うと、彼女も笑う。彼女は、5ユーロ席の常連さんのようだ。オペラの開始時刻になると、横袖の方で、コネクションなのか、若い人達が、空いた席を案内してもらって、座って行った。25分が経過すると、一旦明るくなり、舞台が変わるまで時間があった。そのときに、ということだったらしい。  老婦人や、その他何人かの常連さん達は、悠々と、席を探しに前の方に降りていった。 そのまま戻って来ないので、みつけて座ったのだろう。私は最初から、空いているなとみつけておいた、補助席に座らせてもらった。前の男性が大男で、横からでないと舞台が見えない。バランスを崩しそうになると、隣に席に倒れかかりそうになる。  それでも、立っているよりはずっと楽だし、イタリア語をフランス語に翻訳した字幕が見えるのは、席にいる人だけなのだ。席にいても場所が悪いと見えないから、このオーケストラ席は、最高席なので、たとえ、補助席でも、ラッキーなのだ。  1時間半の前半は終わると、もっと前の補助席が空いているので、そこに移動して、カーデガンを置いておく。幕間に帰った人もいるようで、後半は席が空いていたが、補助は通路側なので、帰る時に便利だ。隣の女性が風邪を引いていて、咳き込むので、それが気になったけれど。  前に行くと、迫力が違ってくる。ベルディーのオペラは、恋の三角関係だから、どれもわかりやすい。その上、翻訳があるので、初めて見るのに、十分理解できた。  3大オペラ歌手の歌うオペラ曲やガラコンサートなどの中で、良く耳にする曲になると、感激はよけいに増してくる。パリに来ると、一度はオペラを見て帰りたいと思って、ドライアイで痛いのに、我慢していた。始まる前、幕間、皆さん、ワインやシャンパンを片手に、優雅にお話する人達もいれば、持ってきたサンドイッチにかぶりつく人達もいる。そういう人達を見物のつまみにして、飲まず、食わずで、帰ると11時半、その翌日は、また、ダウン。