フランス料理

 

 朝、起きると、9時をすぎている。こんなに寝たのは、久しぶり。あんなに陽気な日が続いていたのに、今朝からしとしとと雨が降っている。私の気分を代弁しているかのように。

 忙しく、立ち去ったあとの、空虚と寂しさがただよう。

 

 最後の夜、モンマルトルにある、中華レストランに行く計画だった。一緒に行くはずだった従姉妹は、客を迎えて食事をするので、行けないという。昔、行ったことのある中華レストラン、レマルク、コウランクールという地下鉄駅で降り、うろ覚えの道をたどって行った。そのあたりは、何もなかったのに、レストランが沢山出来ている。坂道を登ったり、下ったりしながら、探してみたけれど、結局見つけることが出来なかった。

 どこか他でと、目をつけたレストランに入った。年代を感じる、フランス料理の店で、ご推薦の紙も沢山貼ってあるので、美味しいに違いない。

席はすぐにつくことが出来たが、そのまま待たされること。途中で、よっぽど出ようかと、何度も思ったけど、時間も遅くこれからどこかに行っても、開いていないかもしれない。

 隣のカップルは、やはり待たされているけれど、全く気にしていない。水もなければ、ワインもなく、男の方が延々としゃべっている。もう一方の隣席の人は、料理を美味しそうに食べている。

カップルの所にマダムが注文に来たのは、1時間過ぎた頃だった。それからまた待たされて、やっと私達の所に。その間何度か通り過ぎても、全く関知していないような様子。  メニューを見て注文すると、ほとんど売り切れ状態。同伴者達は、タルタル(生肉)を注文した。仕方なく、マダムが勧めた、豚の足を私が注文 、前菜には、ラタトイユ(プロバンス風野菜の煮込み)を頼んだ。

豚の足

隣の席の料理が来て、男は大きな固まりの羊を、女性は、キャセロールから、イカを出して食べている。しまった、魚があるのを忘れていた。メニューをみていた時には、イカがあるよ、と言っていたのに。

 前菜のラタトイユは美味しかった。次に出てきた、豚の足、見るだけでもう手が出ない。足そのものに、毛が生えている。メニュにデザートとコーヒーがつついていたが、時間がかかりすぎた、遅い上に、食欲もなくなって、断って、アラカルトにしてもらったら、料金はかわらなかった。赤ワインも残し、フランス料理にへきへきしてしまった。

料理のどこか気に入らないところがあったのか?と聞かれた。

 フランス人なら、当たり前の料理で、こんな美味しいものないのに、とでも思っているに違いない。毛が生え、豚の臭いまでする。フランス人は、肉食人種で、動物ならなんでも料理する。動物のにおいをかぎながら、食べるのが好きなのだろう。

あとで、従姉妹に、その話をすると、それがフランス人の食べ物だそう。毎日、肉を食べて生活している人達なのだから。