シャンゼリゼ劇場

 

シャンゼリゼ劇場で、チケットを買った。金曜日のピアノの演奏を選んだ。最近、生演奏に凝っている。言葉よりもわかりやすいし、日本で、海外から来るアーティストは高いので、行けないからだ。ドミンゴの公演に何度か行く機会があった。日本に3大オペラ歌手としてやってきた時に行ったことがあったが、1万8千円の席からは、3人の顔が見えないほど、遠かった。シカゴでドミンゴの公演があることを、当日になって知ったのに、買った席は前から6番目で、しかも110度ドルほどだった。日本に来ると、客がおとなしいせいか、アンコールは決まった曲しかしない。

 シカゴでは、延々とアンコール曲が続いた。ワイングラスを手に、ほろ酔い機嫌で聴いていた。心底、楽しむ風景が見られた。客も演奏する人達も、歌い手も一体になっていた。行き帰りに、スクールバスが沢山動員されていた。シカゴのお祭りのような感じだ。

 

パリは、それほどの事はなく、お客さんはおとなしいけれど、値段が安いのが魅力的だ。12ユーロで買った席は、第二バルコニーなので、高い場所だった。高所恐怖が出てきて体が痛くなった。それでもピアノの音響は一番良かったのではないかと思う。ピアニストが鍵盤を叩く手が、黒塗りのピアノに映るのまで見える。開いたグランドピアノの弦が動く様子も。

 演奏は素晴らしいの一言に過ぎる。クラシックののことは殆ど知らないので、今夜の演奏家の名前も知らないが、知る人ぞ知るピアニストなのだろう。

 私の席はZ列と書いていたが、どこだかわからなかった。このあたりかと目安をつけて訊ねた席に座っていた人が、この席だと座っていた席を空けてくれた。終わって、帰ろうとして、床に字が書いてあるのがわかった。私の座っていたのはWだった。私の買った12ユーロはZなので、まだ二列上の席だった。しらずに、前に席に座っていたことがわかった。譲ってくれた人に悪いことをした。2列上の席は誰も座っていなかった。その席を買った人達は皆、どこかに座っていたことになる。休憩を挟んで、前に座っていた人達がいなくなっていた。もっと良い席の空きを探して降りていったに違いない。