モンパルナスの昔の面影

 朝から豆ご飯を炊いた。豚肉とマッシュルームを入れてオムレツをつくり、ほうれん草のおしたしと、昨夜焼いてあった鯖の塩焼きを持って、画家のアトリエに行った。バスがなかなか来ない。やっときて乗ると、アレージアで、ここまでだと全員下ろされた。それから15分以上待って、吉田さんの家に20分遅れて到着した。先日から風邪を引いて寝込んでおられたので、お加減はどうか、昨日電話したら、マネージャーが来られるとか、元気そうなので安心したが、伺ってみると、顔色も悪く、風邪もまだ良くないようなので、食事を置いて帰りますというと、一緒に食べなければ呼ばなかったとおしゃるので、そのままおじゃますることに。昨夜、レバノン料理の店に行き、持ってかえってきた羊の肉を出されて、いただいたけれど、私は羊の癖と匂いが好きではないので、半分は我慢して食べ、あとは残してしまった。風邪で、多分どれも美味しくなかったのではないか、と思う。

 食後、すぐに、おいとましますと言うと、画伯も用事があるので、と一緒に出ることになった。今日は天気が良く、とても暖かい。この辺りにパリの農家だった風情を残している場所があるので、そこを歩いて散歩した。石畳の小道の両脇に、古きパリの家が、保存地区になって残っている。とても美しい。

家の庭にある木々は、年代を思わせる老木で、ばらの木の枝も太い。つたをからませた家、ここが大地主の農家だったと教えてもらった家の庭に昔風の小さな納屋が見える。画家のアトリエになっている様子で、石膏の像が見えている。このあたりの家は、ほとんどアトリエだそうだ。これくらい大きな家だと、絵を置く場所も広く取れるだろう。通りを歩いていると、女性が、ここに住んでいるのですか、と聞いてきた。旅行者です、と答えると、このすぐ先に、一度聞いても覚えられない、歌い手の家があると教えてくれ、その先の公園は昔、屠殺場だった所で今は公園になっているから是非行けばいいと薦めてくれた。

 公園には、日光浴をしに来た人達でベンチは皆、詰まっている。公園は見渡すだけで、バスに乗り、一駅先で、私は降り、62番に乗り換えた。画伯は、そのままアトリエに帰られた。一旦アパートに帰り、それからすぐに出ようと思ったが、時間はすでに4時半になっている。今日、予定していた植物園の閉館時間は5時半だから、今から行ってもすぐに閉まってしまう。ルクサンブルグ公園は日が暮れるまで開いているので、未だ暖かい内にルクサンブルグ公園に行くか。