ギャラリー

フリゴ、周りの近代的な建物に抵抗するように、残された建物がある。その中に、様々なアーティストが住んでいる。国鉄の格納庫だった建物で、その周りの倉庫や、バラックに住んでいたアーティストや、工事現場の人達は、立ち退かされたり、この建物に入った。

 従妹は、10何年も前から、ここに住んでいて、図書館が出来、再開発が進み、この建物だけは、

記念物として残った。

 ギャラリー兼、レストランを始めて、1年近くになる。改装工事を時間をかけて、一人で完成させたという。なんでも自分でやってしまう器用な人だ。義理の父親が、水道工事の仕事をしていたので、

母親も、それを手伝って、男並みの仕事をしていた、と以前に聞いたことがあった。

 メゾン、ド、フリゴ(彼女のレストラン兼アトリエの名前)で個展が開かれた。久しぶりだという。初日に行く予定だったが、パリについて、二日目で、

夕方からちょっと、横になったら寝てしまって、行けなかった。翌日みやげを持って行くと、私が来ると言っておいて、来なかったので、日本人ってそんなにいい加減なのか、と友人にあきれられたと、いつもの調子で、からかうように言われた。

 中は、以前とすっかり変わり、広々として、ギャラリーになっている。彫刻家の作品が並んでいた。お客が一人、食事を終えて帰るところだった。

 従妹は、ふっくらと肥えている。それでも工事で10キロやせたそうだ。毎日、食事の残り物が出るので、食べるものには困らない。それどころか、毎日、捨てているそうだ。

白い壁と、カウンターはオレンジ色に塗られている。

普段は、グランドピアノを置いて、コンサートなども出来るようになっているらしい。

 個展をしている彫刻家のご主人は、映画の脚本家で、アラン、ドロンと、ロミーシュナイダーが主演した、「プール」という作品も彼が書いたものとか。日本では、題名が変わっているかもしれない。

 小さな毛の長い犬と、猫が二匹、ギャラリーにいる。私が知っていた、黒の大きな犬、他の5匹の猫も、皆死んだときいてたので、ニューフェース達。

 近所に住んでいるアーティストが、チョコレートケーキを買いに来て、しばらく帰らないで、作品を見ている。彼女は、「この人知ってるでしょ。」と言われて、見ると、ハンサムな彫刻家、と呼んでった人、白髪になり、腰も少し前かがみになって、入って来られた時にわからなかった。

 ギャラリーを見に来る人はほとんどいなくて、閑散としている。昨日が初日にしては寂しい。

 残りものの白ワインだから、と言って、野菜サラダを添えて、出してくれた。商売物を頂戴するのは気が引けるもの。捨てるものだから、と言うので、有難くいただく。