iPad

 

  

  まだベッドの中で、テレビの音だけ聞きながら布団から出るのをためらっていた。

電話がなって、あわてて飛び出した。

息子からだった。

「呼んでいるのに、聞こえないの?」

クリスマスにプレゼントしてくれたiPadにである。

テーブルの傍に立てて、いつ来ても良いように準備はしている。

「電話をかけないとわからないようなら、意味ないよ。」と息子。

電話があって、アイパッドで応答するばかりが続いている。

向こうは金曜日の夜、ビールを片手に。

「あまり飲み過ぎないでよ。」母親の特権である心配性がそういわせる。

「まだ2本目だよ。」

朝と夜の時間差は大きい。

 こちらは、これから起きだして、朝ご飯。

彼らは、金曜日の夜だから、これからレストランに出かけるらしい。

 「荷物届いた?」

 「どうかな。なんかあるような気もしたな。」

 ドアを開けると、一面の雪。

 カバーの下に箱が見える。

 「来てるわ。」

 郵便局から、家の軒先に配達してくれるから、会社に送らないで、と言われていた。

 「開けてよ。」

 別にたいしたものを送ったわけではないけれど、寒いだろうと、温かい下着などを送ったいた。味噌汁になにに、と中から取りだす様子まで見える。

 私の服装はいつもきまって、ブルーのダウン。

息子に持っていったら、こんなの恥ずかしくて着れないというので、以来私が愛用している。我が家の寒さをカバーして、大いに活躍している。

 よそいきの服に着替えて、ビデオの前に座るわけにはいかないので、いつも、お化粧なし、ぼさぼさの起きたてというパターンでカメラの前にいる。

 顔を見ながら、周りの様子を見ながら、息子たちと話をしていると、アメリカにいるようで、寒い中、家まで行かなくてもいいような。

 「すごく寒いのでしょ?」

 「今ね。マイナス9度だ。」

 「ニューヨークがマイナス29度だとか言ってたから。」

 「そういう日もあったけど、しばらく前だよ。」

 雪が積もっているころは、まだ温かいのだろう。

  ビデオは、一緒にいるようで、便利だ。

一人で住んでる気がしない、一瞬。

 

  ビデオカメラは、人を束縛することもあるけど、

 人と人をホットにすることも担っている。

  ふんわりほかほか暖かくなった。