カリフォルニアへの旅

 

      

  サンフランシスコからの飛行機は空いていて、席3列を一人占めだった。

エコノミープラスは、通常は別料金を払わないと座れない。

 私は、ゴールドの5万マイルに必要なマイルを稼ぐために、サンフランシスコに飛んだ。健康に自信がないので、わずか数日の予定だったが、咳もあまりなくて、元気だった。

 出発する日の朝、病院から電話がかかって、その日に来るように言われた。

 喀痰検査の結果に問題があったからだった。

 海外に行くことを告げると、帰ってから連絡するように言われた。こんな状態で、海外に出ても楽しめないのではないかと懸念されたけれど、そんなことは忘れて、楽しめた。 だって、今、元気なのだから、今楽しまなくちゃあ。

 誰にだって、ずっと健康でいられる保障はない。いつか、鳥の羽が折れ、飛ぶことが出来ない時が来る。

 予測の出来ない道を、私達は歩いているのだが、時に羽を広げて、飛ぶことも。

サンフランシスコまでの飛行時間は、9時間くらいなので、行きは楽だ。あっという間に着く。

 空港でレンタカーを借りて、カリフォルニアをのんびりと回るのが、今回の旅の目的だった。

 以前は,若かった頃は、一日中走っていたけれど、もうそういう元気はないし、それ以上に楽しみ方を覚えた。

 レンタカーの料金を考えて、乗らなきゃというのは良くない。

 旅の楽しさは寄り道にある。思いがけない,知らない土地との出会いが,旅の醍醐味なのだ。

  インターネットから予約するのが一番安いはずだけど、実査にはそうではない場合の方が多いのかもしれない。

 空港のレンタカーへは、エアートレイに乗って行く。エアートレインは、空港内を巡回している無料の電車だ。

 次から次に,レンタカーを借りる客がその場所に降りてくる。

 そこにも決めていないので、空いている場所を探して、アラモに並んだ。

 アラモは、メインでもボストンでも、息子が良く借りていた所で、ハーツなどのように、 人気はないが、直接交渉では、サービスが良い。

実際、インターネットでの最安値よりも、少し安かった。

 シボレーというアメ車。トヨタカローラくらいがよいが、普段は乗れない車を撰べる機会も選択。

 ナビはないので、アイパットをナビ代わりに使った。

 スタンフォード大学を見ながら走って、モントレーに出るつもりだったが、途中車が混んでいそうなので、サンタクルーズの方に行き、そこでしばらく見物してから、モントレーに泊まる予定だった。

 車で30分の距離にある、サンタクルーズ。お腹が空いているので、どこかで食事をと思い,2時間のパーク料金を入れた。

 雰囲気のあるカフェがあって、そこに入った。広い空間の角店で、サンドイッッチでは、歴史のある店のよう。

 海老入りのラップにくるんだサンドイッチとクラムチャウダーのボウルを注文した。

 大きなジャム瓶か、ピクルスの入った瓶のようなコップに水を入れる。

 最初は、この店だけか、と思われたが、その後も、そういう店があって、カリフォルニアの定番のようだ。

 サンドイッチは、メキシコ風に、アボガドなど入ってぴっりっと辛いチリの味もして、とても美味しい。 

 今お店に入って来た客が、水を自分の容器にうつしている。美味しい水だ。セルフなので、誰でもいくらでも入れられる。

 その辺りを見ているうちに、今夜はここで泊まりたくなった。可愛くて素敵な,海辺の町。

 道の通りには、いくつもの案内所がある。案内所で聞く方が、ネットで探すよりも良いかもと思った。

  案内所の男の人はとても親切な人で、幾らの予算だと言われて、出来るだけ安い方が良いというと、値段のランクを見せながら、中でも推薦できるモーテルをチェックして、電話をかけてくれた。

 最初のホテルは、98ドル、次に勧められるのは、79、9ドルだった。

勿論それに、タックス12パーセントがつく。

 もっと安い所にするつもりだったけど、79、9ドル のほうに決めて、予約してもらった。海辺の最高の場所にあるという。早速行って見る。

 確かに、最初のホテルの方が、良さそうだ。二つのホテルは隣通しにある。

 最初のホテルに、トリプルAのマークがあるので、そのレートではどうかと思って

 聞いて見たら、案内所の値段よりも安い。89ドルまでのディスカウント。

 予約したほうのホテルに、値段を聞いてみたら、75ドルだという。

さて、そうするか、迷った。名前を入れてすでに予約している。

  89ドルにすべきだとは思ったけれど、15ドルも違うので、2番目のホテルに。

モーテルらしいつくりで、古いけれど、まあこんなものだろう。少々狭い感じがした。

 メインストリートまで,歩いて12三分で行けるのが便利だ。

アメリカも、車を運転しると、お酒が飲めなくなっている。

  美味しい食事とワインをしたいので、遠いところはだめだ。

 案内所で聞いた、この町の美味しい店のどれかに行くつもりだった。

 高いけれど美味しい料理と,最高のワインがあるという店のほうを撰んだ。

 お腹は空いていないので、8時まで空かないと言われても苦ではない。

その前に、その辺を見て歩いて、写真を撮ったりして、時間を潰すことも出来る。

  そのレストランは、ワインバーを併設していていて、ワインの販売もしている。

 何本も買って帰る客がいる。

 映画館の前には沢山人がいる。この週は、フィルムフェスティバルが開催中だった。

このあたりには沢山大学があって、アメリカの頭脳の中心部でもある,シリコンバレーも遠くない。若い人が多い。

 食のグレードも高い。

 8時に、ワインバーに行くと、まだテーブルが空かない。係の女性が,ワインリストを渡して、隣の店で撰んで飲んでいる間に、用意が出来るので、あと5分と言われた。

 どのワインが良いのかわからないので、聞くと、48ドルの、この土地のワインが美味しいと勧められた。

 カリフォルニアのワインと言えば、ナパバレーが知られている。

体験としては、フランスやイタリア、チリなどもものよりも,カリフォルニアだろう。

 このワイン、素晴らしく美味しかった。

料理はフランス料理が主流。チキンはすでに、オウトオブオーダーだった。人気で,手頃な値段だからだろう。

 チコリのサラダ、今お店のスープ、ほたてと海老のグリル。それにアントレは、ポークを撰んだ。

 いつも食べるチコリとはちがって、芸術的に上品なチコリのサラダ。味はパーフェクト。明日も明後日もここに来たいと思わせる店だ。パンも勿論美味しい。

パンにつけるオリーブが、最高の品質で、これほど美味しい店はあまりないだろう。

味に拘るレストランで、パンが不味いと言うことはあり得ない。

コロラドで、この世のものとも言えない,素晴らしいステーキを食べた店のパンは、焼きたての、大きな丸いパンを出してくれた。ステーキの肉が、これほどさくさくと柔らかく, いくらでも食べられる肉だった経験はなかったし、それ以来も出会っていない。

 そこは、郊外にあって、車がないといけない場所にあった。

 そのステーキは70ドルほどで、1キロはゆうにあった。ホースラディッシュをつけて、ナイフがすっと入って、ピンク色の肉が、柔らかいローストビーフのようだけど、それよりも遙かに。

 そんなことも、アメリカの美味しいレストランにいると、思い出す。

 今お店のポークも美味しかったけれど、上品で、作りあげた、こぶりのもの。

 アメリカは、税金がつく、その上で、チップがいる。

 15パーセントは最低ライン。その後に入った店では、最初からチップ込みで、20パーセントのチップだった。

 今思えば、きっとこの辺はお金に糸目のない人達が多いので、最低20パーセント、サーブスが良ければ,25パーセントくらいおくのだろう。

時代は変わって,場所も変わっている。

 日本でも、来年から消費税が8パーセントになる。税金が11パーセントというのは、結構大きいもので、79ドルの部屋だと、86ドルの払いになる。

 レストランでも、普通の店の買い物でも同じ。その上に,チップの20パーセントを見込んで、料理を撰ぶ必要がある。

 ワインにしても、48ドルだけれど、33パーセントを入れて、撰ばないといけない、と私の貧しい頭がくるくると働く。

 でも、またここに来る機会はまずないだろう。コロラドのあの幻のようなレストランのように。だから、ここで食べられる美味しいものと美味しいお酒との出会いは,何物にも替えががたいもの。