携帯電話の功罪

 

       

   友人に渡したいものがあって、ついでに映画でも見ようというので、サンパルのウェンディーというファミレスで待ち合わせていた。

私の携帯は、電波の入りにくい所もあって、一日しか電池が持たないことが多い。

今日は連絡に使うからと、充電して出かける時に持っていくつもりだったのに、

荷物に気を取られて、うっかり忘れてきていた。

 やばいな、と思ったのだけど、仕方がない。

彼女はいつも早く来ているので、私も30分前にウェンディーズで座っているつもりで早く出た。

 サンパルまでは、昔良く行った。富士商会という文房具屋さんがあることを知って、文具を買いにも。ウェンディーズがあったかどうか、どこにあったのかも知らなかった。

 いいかげんなものだけど、私の得意芸がある。わからなければ知っている人に聞けばよい。

サンマルクカフェがあるので、そこに入り、「ここは元ウェンディーズですか?」と聞いたら、違うと言う。

ウェンディーズを探しているのですが。」

「そういえば、ダイエーの二階にあったけど、なくなってますよ。」と言われた。彼女はサンパルの一階だと言っていた。

まだ時間が早いので、5階のギャラリーに上がって行った。そこで待てば来るだろう。画廊は閉まっている。事務所の人に、聞くと、そこで待っていれば来られるのでは?

しばらく待って、「そうだ、駐車場に行って、車があるかどうか確かめよう。」と思って、

 駐車場への行き方を聞き、地下二階の駐車場に行った。トヨタの車がいくつかあるけど、友人のらしきものはない。

お盆だし、混んでるからまだなんだ、と思って待っていたが15分待っても来ない。2時になって、日を聞き間違えたのかな、と思いながらまた上に。

 別の人に、モスバーガーならありますけど、と聞いて、モスバーガーを覗いた。

それから、また別の人に聞く。

 ウェンディーズは、テニスショップになっていますよ。そこで待っていた。

、公衆電話があればと探しながら。其のたびに行き違いにならないかと。

で思い出した。勤労会館に行くといってたっけ。

勤労会館はどこですか?また聞く。

隣の建物だった。そこに行くと、女性が絵画らしきものを持っている。

「絵画をもって来られたのですか?画廊はどこにあるのですか?」

彼女も知らなくて、車が混んで遅くなったと言っている。図書館があるので、私が図書館の職員から、2階だと聞いた。

 大きな会場で、搬入された絵画が、テーブルの上に並んでいる。

友人の名前を言って、もう搬入されましたか、と聞くと、

名簿を調べて、「先生の作品は持ってこられてます。」

じゃ、ここの地下にある駐車場に車を置いてたのかしら。時計はすでに2時半。もう会えないなあ。

一階にやっと公衆電話を見つけて、家に電話して、息子さんから携帯の電話番号を聞いた。

それで、やっと彼女との連絡が取れた。

  携帯がないと、どうにもならないのだ。

 私は、時々、携帯を忘れることがあるけれど、それでそう困ったことがなくて、

今までやりすごして来たのだけど、携帯忘れるなんて、と他の友人に言われたこともあるし、忘れる友人もいる。

昔、母が約束の時間に、30分は当たり前、1時間以上も遅れて来て、私が文句を言うと、母は決まって

「これからは約束したらだめだわ。これからはやめておこうね。」というのが口癖で、母と娘は同じことを繰り返していた。

母との待ち合わせは、1時間半まって最後になった。

びっこを引きづりながら、梅田芸術劇場にやってきた。歩けないのに、無理して、私が待っているから、とやってきた。

それが最後。母はその後、一人で外出できなくなった。

そういう母の娘である私も、子供の頃から遅刻の常習犯だった。

「ごめんね。待たせて。」

実際待つよりも、待たせる方が、気が気ではないのだ。年を取るにつれ、私は待たせることが少なくなった。

わたしよりも早く来ていた友人が、のんびりに変わり、待ち合わせの時間を、アバウトに。30分の余裕を持っての約束にしようと。

世の中、何が起こるかわからない。

私は、母で待つのは慣れているので、人を待つことがそれほど気にならない。

私の待ち時間で、最高は2時間半。紀伊国屋の前で九州から来ている人を待った。

携帯もない頃、彼女は旅行会社に勤めていて、引率で来ていた。

お客さんの世話で、京都から出てこれなかったとか。

会えて、話が出来て良かった。彼女は、もう帰ってしまっただろうと思いながらやってきた。

海外旅行、関空のカウンターで、待ち合わせた友人が、来ないので、ぎりぎりまで待っていた。

カウンターが閉まって、頼んで、入れてもらったことがあった.

 ぎりぎり、一人で行くつもりでゲートに来ると、友人がいる。ケロっとしている。「先に入っただろうと思っていた。」という。

 今回も無事に会えて、映画も見て、美味しい、うなぎも一緒に食べることが出来たので良かったのだけど、携帯がないと、本当にどうにもならなくなっている。携帯があるから、どこからでも連絡できるという利点が、デメリットにもなっている。

携帯は、いつも携帯してないと意味がない。