本物のファドを体験

     ホテルの部屋

  駅についた。

ホテルへの行き方をプリントしているので、歩いて行こうと思い,通りを探していると、若い男の人が、手助けしましょうか、と言ってくれた。

 片手にパンを持っている。

フランスが出来るのか?と聞かれた。彼はフランス人だった。旅が好きで、今はリスボンに住んでいる。

 パリが嫌いで、ポルトガルの人達は暖かくて親切、とても気にいっていると。

行く方をみて、わかるから、と言って、急な坂道や階段があって、私の旅行鞄をずっと抱えて持ってくれた。とても一人では無理だった。

  

 アルファマ地区は、リスボンでも古くから住んでいる人達の庶民的な,地域。

 カテドラルや、城もこの地域にあるので、阪道の勾配、迷路を縫って行く細い道、時には階段がいく段もあって、歩いてだけならいざ知らず、重い荷物を持っては,無理。本当にラッキー。でも彼でも、番地が見つからない。食堂のおばさんに聞くね、といって聞いてくれた。するとおばああさんは、坂を上がってきて、ここではなくって、向こう側だ、と。おじいさんが割ってはいって、そうだ、向こうの何々、と言っている。

 本当に、とてもわかりにくい場所。番地が隣で切れていて、探しても見つからないはず。別の通りだった。

 そのフランス人は、ポルトガルの女性と恋に落ち、子供が出来た。

 若い頃良く働いたので、というが、まだ若いでしょ、というと、38にもなっているという。そんなにまだ若いのに。

 彼は成功して、マガザンを持っている。遊んで暮らしている。息子が一人いる、などの話をしながら、ホテルにたどり着いた。

 ホテルとは言えない。アパートで、番地しかわからない。

ホテルの中

 すっかりお世話になってしまった。彼がいてくれて、私は本当にラッキーだった。 中に入ると、出ていく客がいて、「ここが素晴らしいホテルだから、楽しんで。」と言われた。その夫婦は、オランダから来ていて、空港までのタクシーを待って,いた。

 このホテルから、空港までは10分。15ユーロくらいで行けるそうだ。

入り口

 

 私の部屋は,スイートなので、部屋だけだった。キッチン付きのアパートも中にあるが、私はスイートというので、当然キッチン付きだろうと思っていた。

 エレベーターはなく、3階までの階段。

部屋は素敵で,デザイナーホテル。

 ネットでは68000円の部屋が、割引きで10000円になっていて、それに飛びついたのだけど。

中に入ると

 アルファマに泊まったことは正解だった。

今度来ても、この地域に宿を取るつもりだ。

 本当のファドは、この地域にしかない、とこの前、ワインの店で言われたけど、本当だった。

 迷路のようにややこしい地域なので、コインブラで教えてもらった、ファドの家、というのを探しておこうとインターネットで調べたら、食事が不味くて、値段が高いと不評だった。受付の人に聞くと、そこは、10時以降は飲み物でファドが聴けるとのこと。そこまで歩いても近いので、行って見た。

犬が窓辺で

途中で迷って、そばの店で聞くと、その店は,カテドラルの下の道にあると言われて、一旦電車の通りに出て、電車沿いにカテドラルまで歩いた。結構遠い。

 そこに店を見つけて、店の人に幾らだ、と聞いたら、食事で50ユーロくらい。10時からのファドは、10ユーロに飲み物を注文すれば良い。

 通りを歩いていると、またファドハウスがあって、そこの方がよさそうだった。 食べものが美味しそうな感じ。7時からだという。

 そこからまた歩くと、ファドと書いたカフェのような店がある。ここは8時半から。

 ホテルまで帰り、もう一度出直して、帰り方をチェックしながら、歩いた。近道があって、電車ずたいにいかなくても良いことがわかった。

 7時ぎりぎりに、ファドの店に。

 店頭で、何が美味しいの?お勧めは?と聞くと、大きな魚、だという。他のも美味しい。美味しくなけければ、お金はいらない、とまで。

 中でウエイターにも聞いたら、同じ料理を勧めた。

ここは、料理がどれも15ユーロで、飲み物は、ワインがハーフで10ユーロ。

ミニマムで15ユーロの支払いで聴ける。

 どの人もとても上手だった。お料理は美味しくて、最後の最後まで、皿のそこまで食べつくした。お腹も空いていたけれど、今までで一番美味しい魚だった。

 お腹も大きくなって、歩き出した。またファドと書いているので、聞くと、ここは今日はないが、上がって行けば,良いファドがあるという。もう食事してしまったというと、そんなことは問題ない、と。

 本当のファドに出会ったのは、その店だ。素晴らしい声がする。

 すると歌い手の男の人が手招きして,私を中に誘った。

食べて来たので、飲み物でも良いか?と聞いた。

 そこは,飲まなくても,誰でも聴ける。

 飲み物のコーヒー一杯でもかまわないのだけど、サラダがあるので、それを注文した。そのサラダは、どこのサラダよりも美味しい。

 今お店は、さっき、美味しそうだ、と思ったけど、ほんと。女性ばかりでやっているカジュワルな店だった。

 そこで、私は結局11時半まで、いることになった。

休憩の間に,帰ろうとして、ギタリストとその歌手が外にいるので、ありがとう、と言いながら、ファドがすっかり好きになってしまったと言うと、アルファマ週末に泊まらないといけない。週末は、どこでもファドがあって、ハシゴしながら、次から次にファドを聴きに行けばよい、と。下から上の方まで,賑やかなのだと。

 バイロアルトは、観光客のためのもので、本当のファドはアルファマでしか聴けない。

 また始まりそう。ギタリストが、席に座れと勧めてくれた。

そこからが凄かった。

 幾人かの人がやってきて、歌姫のカルメンがやってきた。カフェを切り盛りしている若い女性達と、かけないながら歌う。踊りながら歌う。

 店内の客達も、すごく楽しんで、席を立つ人はいない。若い客もも入ってくる。

男の人が二人来て 、それっぞれ、のど自慢で,ファドを歌う。ギタリストもやってきた。 

 これが本当のファドなんだ。民衆のファド。それも凄く上手な人達ばかり。鍛え上げた声。日本の民謡のようなもの。

 スペインのギターとポルトガルのギターとで演奏する。スペインのフラメンコの要素も入っている。

 ホテルに帰りたくない。この近くで良かった。ファドの好きな,ポーランドから来たカップルがいた。男の人は、随分詳しい。

 こんなに楽しいファド。皆とても素敵な人達。

 最初から歌っている人は、タクシーの運転手を生業にしている。CDを買った。ファドタクシーと書いている名刺を配っている。他の歌い手も、普通の生活をしながら、ファドを歌っているのか、週末ではないので、仕事がないので歌いに来たのか。

 こんなに楽しい夜はなかった。これが本当のファドだ。

レコードを買っただけでは、ファドの醍醐味はわからない。こんな体験をしてしまったら、誰でも、夢中になるだろう。場にあってこそのファド。