役者魂、三国連太郎

    

    

 

 三国連太郎が亡くなった。息子の佐藤浩一が、父親としては?と言う質問に、

「それや、ひどいよ。」

 3番目の結婚で、出来た初めての息子と、3歳の時には、すでに別居していた。

その頃、文芸座の、太一喜和子との熱愛で、太一の家に住み込んで、母親に結婚の許しを

得ようとの思惑があったが、2,3か月で、彼女の家を飛び出した。

 彼女が変死した後で、どこかの対談で、三国は、「彼女が昼も夜も、一日中彼女の愛の要求、嫉妬心の強さに、耐えられなかったから。」と答えていた。

 太一喜和子、と言えば、昨年の末に、亡くなった勘三郎が、青春時代、熱愛関係にあり、勘三郎のその後の人生に深い影響を与えた、と勘三郎自身が語っていた。

 私が思いでの中で、平幹次郎との共演で見せた、梅川が最も印象的で、彼女には一番適役のように思える。

 一面の雪景色の中で、緋色の下着、緋色の赤紐で、忠兵衛に首を絞められ、のけぞるようにしして、神秘的な、恍惚の笑顔を見せて、死んでいく梅川が。

 お酒を浴びるように飲み、泥酔した状態で、水死した、現実の喜和子も、最期まで、役者だったのかもしれない。

 三国は、老人の役をこなすために、麻酔なしで、10本の歯を抜いた。

 それを聞いて、驚いた西村に、「年を取れば、歯は抜けるもの。少々早くても、どうってことない。」と言ったそう。

 徹子の部屋で、彼は「私は執着心がない。」と語っている。

 そして、今朝、テレビに、谷村新司が出ていて、彼は14回も引っ越ししている。

 2,3年に一度は引っ越しをしている。

  引っ越しをするたびに、作品が沢山生まれるそうだ。

 2,3年もすれば、所有品が溜まってくる。それを捨てて、新しい生活に入るという。

 谷村新司が最後に残したいものは、「自分の作った、作品」で、それは、その時々の生き様の遺言でもある、と言う。

 彼も、執着心がないのだ、と言う。司会の、小倉さんは、その逆に、何も捨てられない、という。狭いアパート時代から、大きな家を持てるようになって、そこから、また、小さくしていくなんて、できない。」

 どちらの生き方、価値観も、その人にあっているのだと思う。それを無理に変えるのは、その人を束縛することになり、生きづらくするだろう。

 人それぞれ、人はおのずと、自分の価値観を、その人の人生に、繁栄させている。

執着心の強い人は、肉質的だ。 執着心のない人は、人間の老いと同行して、自然で、優しい顔になり、上手に枯れていく。