越前陶芸の里から、三方五湖

  

     

  今夜の泊りは、越前陶芸村の旅館に決めていた。

宿に入る前に、越前海岸を見に行くことに。

越前というと、すごく時間がかかるというイメージを持っていたが、

案外早く行ける。

大津からは、高速を使わずに、一般道路をのんびり走り、途中で、

写真を撮ったりして休みながら、3時過ぎには、越前海岸に。

水上勉の「越前竹人形」というイメージを持っていて、暗いと

思いこんでいたけれど、快晴に恵まれ、海もおだやかなので、

そんなイメージはないが、この海岸から、眼下に見える海は、色が黒く、岩も黒く、

時間と共に、波が荒くなって、岩にぶつかって砕ける海が、真っ白になって、広がる。

見ていて、あきない。

北朝鮮に拉致された人々を思うと、恐ろしくなる。

越前といえば、水仙の町でも有名で、傍に、水仙の丘があって、海岸から、道を挟んで、

のぼり道になって、灯台へ続く、丘には、水仙ばかり。

もう少し、早ければ、満開の頃で、良い香りが漂っていたのだろう。

越前は、越前かにも、名物の一つ。

蟹シーズンの最後の月でもあって、蟹も食べたい所だが、ネットで調べたら、2万8千円うらいなので、そんな贅沢は出来ない。

私が選ぶ宿は、二食付きなら、1万5千円までの上限を目安にしている。

海岸あたりの宿は、やめて、陶芸村にあう、4000坪の庭に、5部屋の宿、という

「樹香園」という宿に決めた。

通常は18000円のコースなので、悪くはない。利用客の感想を見て選ぶ。

お風呂のお湯は良いけど、小さくて、家の風呂のほうがまし、と書いているので、

海岸沿いにある、温泉のどこかで、入っていこうと思った。

地図にある、温泉のお勧めで、海の展望が、穴場ちゆうの穴場、と書いている、公共の施設に付随している、「さざなみの湯」を選んだ。

入湯料は、400円。

中は閑散で、一人だけ入っている。その人も、すぐに出て、私だけ。

肝心の展望は、隠しの紙を貼っていて、見えない。

次に入って来た人に、展望につられて、ここに決めたというと、その人は

この施設の従業員で、毎日入って帰るのだそうで、以前は、この紙がなくて、気持ちよかったのだけど、外から見えるというので、貼ることに決まったとか。

その人と話をしちるうちに、他の展望温泉についても、情報が。

この辺りは、どこでも、500円で入浴できる。一番人気の所は、土日は、満員で、着替えの部屋も、床はびちゃびちゃ、とても入る気がしないのだそう。

日本海、という温泉は、露天もあり、海と一体で素晴らしいそうだ。

私は、清潔で専用風呂のような温泉で、良かったわけだ。

夕日が素晴らしいらしいが、そでまでは時間がある。

そこを出て、宿に。

確かに、広々していて、掃除も気届いて、良い宿。

食事は、スペシャルというのだけど、量を少なくしてもらっている。

沢山、次から次に出てきたら、もったないので、食べるのがいけない。

体が冷えて、もう一度、宿でお風呂に入った。

コメントとちがって、改装していて、綺麗だし、それほど小さくもない。

お湯は、つるつるで、滑りそうなくらい、とろんとした温泉。

トイレも洗面所も、部屋にないのが難点といえば。

部屋は広くて、12畳もあるのに、窓を開けると、道路が見えて、中が見えるから、開けられない。

トイレは、二つしかない。

この宿は、5室だが、30人まで泊まれる。

料理旅館なので、大広間で、宴会があって遅くまで、ワイワンやかましかった。

食事の味は、申し分なかった。

造りが特においしかった。

すき焼きを用意しました、と言われて、これが、量を減らすのに選んだ、料理のよう。

品数は、5品くらいになっていた。

これでは、何も言わなかったほうが、良かったかも。品数は少なくて、ボリウムのあって、

ありきたりの食事。魚が造りだけで、物足りない。

陶芸の里だけあって、越前陶器の良いものを使っている。

石油ストーブを、廊下や、広間に、置いているけれど、寒くて、冷えあがる。

特に、トイレが寒いし、その横にある洗面所も冷たくて長居は出来ない。

お風呂は、11時まで。

夜中、寒くて、寒くて。

朝食に、食事処まで行く。晴れているのに、屋根から水が流れている。霜だった。

朝の冷え込みと、日中は、上着はいらないほど、温かく、差が激しい。

陶芸の里なので、陶芸会館や、陶芸直売、陶芸の体験など、陶芸に関するすべてが備わっている。

植木や、盆栽を陶器に入れて、売っている。

これは、良いアイデアをいただいた。

備前焼の器を買って、料理が合わないので、処分しようか、でももったいない、と置いていたものを、使って、観葉植物を入れたら、さぞ映えるだろう。

本当に好きな器を買って、それを使ったら楽しいだろうな、と思う。

嫌いなものは、さっさと捨てて。

でも、なかなかそれが出来ないもので、嫌いなもの、というのがない。まあまあ、のものを

使っている。特別ではないにしても。

朝食のテーブルに、小さな一輪挿しの器があって、これなら、買って帰りたいと思った。

同じようなのがなかった。

似たようで、違う。

陶芸館で聞くと、

宿は、相当年代ものの良い陶器を使っているそうだ。 

欲しいものは、手に入らない。

人間の一生は長いようで、短い。

身の回り品、とか、身に着けるもの、というには、長い年別が必要なのではないだろうか。

愛用品というのは、そういうものだろう。

好きだから、買ってみて、気に入らなくなって、捨てていく。

そんな生活はしたくないものだ、と思う。

もう今からでは遅いけれど。

帰りの道は、敦賀から、三方五湖を経て、小浜から、高速に入る道を選んだ。

ぐるっと一周してくるかっこうだ。

三方五湖は、青口うなぎの産地で、うなぎの専門店がいくつか。

徳右ヱ門、という店を、産直の野菜を売っているおばさんから、教えてもらった。

1050円のお弁当をいつも食べるのだそうで、その店から見えている、三方五湖に面した店は高くて、勧められないと。

店のに行くと、美味しそうな、匂いが漂う。

入ると、そんなに安くはない。

京都の「梅ノ井」級の値。持ち帰り用に、お弁当があって、その最低のが、1050円だ。

上がって、普通のうなぎ丼を注文した。

普通でよいのか、と何度も念押しされ、注文を終えてから、なんだか不安に。

不味いのかしら、とか、国産ではないのでは?

他の客は、4200円くらいの、うな重か、それ以上のものを注文していたようだ。

普通のうなどんは、美味しかった。肝吸いもついて、1680円。

1050円の持ち帰り弁当と同じものだろう。

おばさんが勧めてくれたように、とても美味しかった。

梅ノ井でも、並と上、特上の違いは、うなぎの大きさの違いだった。

大きなうなぎが出ても、食べられないのだから、これで十分。

夜まで、ずっとお腹が空かなかった。