エッフェル塔の麓「ケ、ブランリー美術館」

   

 6日間の美術館パス、いよいよ最後の一日だ。

 あともう少し、頑張って行こう。

 朝、相変わらずの寒さ、雪が舞っている。

 PERで、ポン、アルマで降りて、セーヌ川の左岸側を歩いて、Quai Branly に。

 ここにある、レストランは、友人が美味しいと言っていたので、一度、とは思うけど、 お腹がまだ空いていないので、またの機会に。

 「楽しいグルメ」というメニュが18ユーロと書いている。

 これは美術館の入場料とセットではないだろうな。

  あたりは、人っ子一人いなくて、寒々していて、美術館は、閉館しているのか、と思われるぐらい。庭から入っていくと、ガードマンが寒そうに庭に立っている。

 チケット売り場にも、客は一人もいない。

 

 けれど、中に入ると、結構沢山いる。

11時開場なので、その時間を待って入って来た人達だろうか。

 子供を連れて来る人が多い,美術館。

 エッフェル塔の麓に位置するこの美術館は、建築家、ジャン,ヌーヴェルが設計した、ユニークな作りで、入り口までの、登りの床には、文字の川が流れて、中に入ると、大きな洞窟のようでもあり、長い船のようでもあって、進むと、いつのまにか、また元に戻ってくる。

 この美術館は、西洋以外の、プリミティブで野性的、知恵と自然信仰に、彩られた、アフリカ、、アジア、アメリカ、オセアニアなどの原住民の美術を集めて展示している。

 革新的な試みも,精力的に取り組んでいる。

 文化促進に力をつくした、シラク大統領を記念して作られた。

 この美術館で、髪の毛を題材にした、特別展が開催中。

ピカソ

荒木のフォト

ブロンドの美人から、威厳の象徴や、神の代理としての,様々な髪の毛にまつわる展示のようだが、その中で、ショックを受けたのは、戦争末期に、ナチに協力した女性達が、

 連行され、丸坊主にされて、公衆の面前を、車に乗せられてて、見せしめにあう映像が流されていた。女性が、坊主頭を何度も殴りながら、公衆に怒鳴っている。

それを見る,パリの市民達は笑い、おもしろがっている。

 頭を刈られた女性達は、若い人から,年のいった人まで。泣いて,悲しそうにうなだれ、おびえ、顔に怪我をしている女性も。 

私は、マルグリット、デュラスの「ヒロシマ、モナムール」を思い出していた。

ドイツ兵との恋に落ちた女の子は、ドイツ兵と逢い引きを重ねている。

 ドイツ兵は撃たれて死ぬ。彼女は街に引き回され、丸坊主にされた。

父親は彼女を家に監禁する。

髪の毛は伸びていったけれど、彼女の心は死んだようになって、狂気の状態でし耐えられなかった。

ヒロシマ、あなたは何も見なかった。

ヒロシマ、私は全てを見たのよ

何年も後に、平和の映画を作るのに、女優としてヒロシマにやってきた彼女、

ヒロシマで、昔の恋と同じ情熱に出会う。ヒロシマの男性と。

 裏切りものとして、石をぶつけられ、坊主にされて、引き回される女性達は、戦争の犠牲者達だ。彼女達の人生を奪ったのは、戦争を引き起こした人達。の欲望、征服欲。

 人間の本能である、欲望のなせる結果だ。

ヒロシマの原爆を体験している、私達日本人が、原子力を容認してきた。

安全神話を作りだしたのは、私達だ。

美術館の意図は、問題を投げかけることにあるだろう。