お役ご免の楽隠居

 

   

 息子の親が、結婚に熱心でないのは、男は幾つになっても結婚する相手がある、という考えを持っているからだろう。

 娘を持つ親は、そんな悠長なことを言っていられない。

 出産は36才までに、という。奇形児が生まれる可能性が高くなるとか。

 このご時世だから、結婚しなくても良いではないか、と思う両親が多くなっている。

 自分達の結婚生活を振り返って、幸せではなかったから。女は、家庭に入るのが当たり前で、職業につけなかった、母親は、特に。

 働いて、自分で生きていければ、自由があって、自分の時間を楽しめて、へのかなわなかった、失われた欲望が強いのである。

  親達は、そういう子供達を家に、或いは、別居していても、いつも気にしている。

  子供の保護者であるという観念が、つきまとっている。

 私もそうだ。子供のために、という思いが強い。

 息子から、結婚うんぬんと言われて、ショックだったけれど、すぐにそれは、ある喜びに変わった。

 肩の荷が下りて、気が楽になった。これで、親としてのお役は免除される。息子への責任感のようなものが、いつもどこかにへばりついていた。

 息子の管理は、彼の伴侶となる人がその責任を負うことになる。

 今までは、着るものを見ると、買ってあげようか、と息子の顔が浮かんで、自分のものをセーブしたりしたけれど、これからは、奥さんの役目に。

 美味しいものを食べさせてやらねば、と思っていたけれど、それは奥さんの役目に。

 なんという解放感。

 これからは、息子の所に行くのに、身軽に、身体をいたわりましょう。

 私は、お母さんだもの。大事にしてもらわなくちゃ。

 身軽に出かけて、沢山、親孝行をしてもらいましょう。

 

 第一線の親から、楽隠居です。

  

 結婚して、苦労して行くのは、夫婦なんですよね。四苦八苦しながらも、二人三脚で、 子供産んで、育てて、やがて結婚するまでは、親の責任を背負い込む。

  

 私は、お役ご免です。

結婚は、自由の死、束縛への従属だ、と思う。

 親は、その反対です。

子供が結婚することは、親に取っては、自由の奪還、楽しみの享受です。