ルーブル「レンブラントとキリストのフィギュール」

 

 ルーブルに着くと、7時を回っていた。

夜とあって、並んでいる人が少ない。

普段は5時半までだが、水曜日と金曜日は、10時まで。

以前は確か9時までだったはず。夏だから?

荷物の検査をすませて、下に降りる。

6ユーロの夜間料金はなくなっていて、美術館だけだと10ユーロ、

レンブラントの特別展だけだと11ユーロ、併せて14ユーロになっている。

普通の料金なら、もっと時間がある時に来た方が、ドラクロワの美術館もつい

ている。

一旦は諦めようと、上に上がった。でももう日がない。土日は混むので,炎天

下並び、中も混雑なんていやだ。

レンブラントの特別展は、なかなか見られるものじゃないから、見たい。

従姉妹には、メールで9時までには、アパートに帰っていると言ったので、そ

ちらも気になって、やめようと思ったのだが、今夜の約束とは限らないし、

そうであっても、私は、レンブラントが見たい。

 

 「レンブラントとキリストのフィギュール」

これがどうしても見たい。

又荷物のチェックを通って、チケット売り場に。

14ユーロ払って、まずは、レンブラントを目指した。

中は、結構人がいた。それでもすぐに入られるというのは、夜だから。

何列も、作ってあって、昼真だと、ルーブルに入るまで、長蛇、やっと入っ

て、レンブラントを見るために、又、長蛇。入っても、人で見られない状態

だろう。

勿論、写真は禁止。

レンブラントは、オランダのプロテスタント。キリストを理想像として描くの

ではなく、レンブラントの生涯と、キリストの人間としての心の思索、苦悩、

生き様を、フィギュールに描き込むことで、レンブラントのフィギュールと重

ねて生き、描き続けたことが理解出来る。

もう、言い表せないくらい、深い感動を覚え、キリストのフィギュールを見て

いると、自然と涙が出てくる。

あるおばあさんは、手を合わせ,拝むようにじっと眺めていた。

キリストが十字架にかけられる絵は、筋肉の動きもわかるように、苦しみに歪

んだ顔、人間としてのキリスト、それまで、食べ、動き、労働に鍛え上げた身

体を持っていたキリストが描かれている。

キリストを描くのに、レンブラントは、ユダヤ人の横顔をいくつか描いてい

る。幾人かのユダヤ人の中に、キリストに共通する、深い思索、宗教感、生活

のかけらを見いだそうとした。

ボッティチェリ

ハーバードにある、キリストのフィギュールは、聡明で思慮深い眼をした,若

々しいキリストで、隣に展示された,キリストは、苦悩の中に、諦めにも似

た、深い憂いと、表現しようのない優しさを秘めている。

レンブラントは、自画像を描き続けた画家。

その中に、「人間性」の漂流の行程と、肉体と精神(魂)の変容を描きつづけ

けた。

キリストの苦悩、愛を、レンブラントのそれに合わせて、模索していったこと

がわかる。

素晴らしい展覧会だ。

見て良かった。

ほとんどの時間をレンブラントに費やして、残りの時間は、「モナリザ」と

フェルメール、そして、レンブラントのフィギュール。

モナリザも空いていて、前でしばらく見て。

贅沢。

後ろから、日本人の夫婦の会話。

モナリザ」が世界で最も優れた絵画ということになっているけど、他にもす

ごいの一杯あるのに。映画にもなって。」

「最後の晩餐も行ったね。」

ルーブルはなんども来ているから、今回はパスしても良いと思って

いたけれど、やはり、今回の体験で、最も感動したのは、

レンブラントとキリストのフィギュール」

出てくると、夕焼けが終わって、まだ明るい。

10時をすぎても、まだ。

今回は、いつも8時から9時までにアパートに帰るので、明るくて、

冬場のような、パリのイルミネーションは見たことがない。