美の魔術師

 

 絵を描いている、芸能人は多い。

  自然の脅威に、対抗する術もなく、打ち負かされて、人間の無力をつきつけられた時に、その中から、人々の苦しみ、悲しみに寄り添い、共感する人々の涙で、津波の去った後の、傷口をさらけ出した大地に降り注いでいる。

 石坂浩二さんが、描いた「仏陀」の絵画は、テレビの画面を通してではあるが、素晴らしい作品だった。

 絶望した心の中の、震える身体の隅々にまで、柔和な、暖かい光を浸透させる、仏陀の姿を、神秘的に描いている。

  石坂浩二は、神秘的で、神話的な絵画を描く、モローが好きで、何度も、モローの館の某ミュゼーを訪れていると以前に聞いていましたが、まさに、その絵は、モローを思い起こさせます。

 こういう天災に乗じて、神がかり的な言葉で、終末論を唱え、選ばれた人達だけを救うのだというエセ信仰を唱える人も出てくるでしょうが、祈りの心を込めて、一心に描かれた、絵画は、深く、人々を癒し、包み、抱く力が溢れているように思われます。

 東京で、展示会が開かれた後で、京都にある太秦の撮影所でも展示されるそうです。

 他にも、鶴太郎さん、工藤静香さん、亜紀さんも釈迦の素顔を描いて、チャリティーの展示をされています。

お釈迦様が、日本では最もふさわしい、慈悲と慈愛を表現して、全ての人の心の救済の象徴なのでしょう。

モローの、神秘的で、暗い闇の中の、万年の彼方から、透明な空気を割って、光を投げかけて来る絵を見ていると、不思議な安らぎの空間に引きこまれて行くような感覚を覚える。美しさ、それを美というのだとしたら、美術は、美を表現する術ということになる。心を揺さぶり、感動させる画家は、美の魔術師にちがいない。

モローの絵画は美しい。石坂浩二の絵画は美しい。感極まる美しさがあった。心を惹かれたのは、私だけではなかった。

、朝ドラに出ていた、ゲストの富司さんが、感動の涙を浮かべて見ておられた。