雪が積もった

 

昼過ぎから降り出した雪で、庭一面真っ白に覆われた。

月曜日は、母のホームに行く日なのに、車で行くのは自信がないので、

歩いて、バスト電車を乗り継いで出かけた。

勿論、冬タイヤは履いているのだから、乗れないわけではないが、

この前に、タクシーの運転手さんが、言っていた言葉がひっかかった。

「こちらは冬タイヤをつけて、運転していても、履いていない車が多いので、滑って追突されるのが怖いですよ。」

長年の経験で、幾つかそういう事故があったのだろう。

 そういうことも想定して、電車で行くことにした。雪ブーツを買っていたので、雪道は心配ない。

先日、友人が心斎橋で、雪靴を買った。城崎に行こうよ、と前から言っていた。私がニューヨークに行くのに、3足も雪靴を買って、結局、最後に生協で買った、980円なりの一番安いのが重宝したと話したら、城崎用に、買っておくと、友人が言い出した。

心斎橋の通りに、私が買ったようなブーツをみたよ、と言って、そこに行くと、友人のサイズは売りきれていて、7階のスキー用品の売り場にも、雪靴があるからと言われた。

そこで、彼女は、とても良いブーツを買うことが出来た。

 そして、この雪だ。メールで、「明日は仕事です。雪靴があるから安心です。」

 グッドタイミングだった。友人の住まいも、坂道ばかり。

 私の家の辺りは雪が積もっているのに、駅まで来ると、ほとんどない。母のホームでも、外は雪が降っているけど、積もるまでは行かない。

 エレベーターの点検中で、母は3階のロビーで、他の入居者達と、オセロを積み上げるゲームをしていた。

 積み上げて、誰かが最後に倒すというゲームだ。

中には、怒ってばかりいる人がいたり、「オセロならするけど、こんな馬鹿みたいなもの嫌い。」と鼻の高い人もいる。

 難しい、我が侭な人が多いのだなあ、と思う。意地の悪い人もいたり、神経質な人もいる。

 そういう人達と、まともなら、衝突しても良い場面でも、ニコニコゆったりした人達の頭が、豊に包容力を備えた、認知症の人達との間で、仲良く、円満にゲームは続いて行く。「そんなもの嫌い」と言っている人も、いいながら、ゲーム加わって、自分の番が来ると、積み上げる。

その人は、ダイニングにいて、いつも1人で、テーブルに座って、周りを見渡している。 本当は、人に交わりたいのではないかしら。独りよがりに、威張ってみても、寂しさから、テーブルに座っている。

オセロゲームに拒絶しながら、入っているときの、表情には、我を忘れて、笑いが見えていた。

 

 エレベーターの点検が終わり、母と私は部屋に帰った。毎回少しづつ、みかんと、マンゴーの干したのを持って行く。

 冷蔵庫に、小さなクッキーを二つ、家にあるパイナップルを少し。

母は、マンゴーの干したのが、時に気に入っていて、「これ美味しいわよ。美味しいから食べて。」と私にも勧めながら、少しづつ、美味しいわ、と言いながら、いくらでも食べるので、一回分しか持って行けない。

 母は、益々、良い顔になって行く。チャーミングで、年の割には、皺がない。