音楽が美しすぎて

 

 飛行機の中は、快適そのもの。

 この飛行機は、夕方の4時20分にロスを出発して、ニューヨークに到着するのは、夜の12時50分、深夜になる。

 昨夜、どこにも出ないで早く寝て、10時間ぐっすり寝ているので、全く眠たくない。

夕方だから、白ワインを飲める。朝からお酒は、アル中みたいで気が引けるし、飲みたくない。

市川海老蔵は、素面の時は、グッドガイだと、ドラえもんが言っている。

真面目な人ほど、普段自分にプレッシャーをかけている人ほど、お酒が入ると別人のように豹変すると、良く聞く。酒癖の悪い人は、かわいそう。本人が、自分でコントロールするには、飲まないようにしないといけないから。飲まないように、我慢していても、限界が来る。いくら止められていても、自分でセーブしていても、それ以上のプレッシャーがかかれば、おじゃんに。

 私だって、禁酒していたのに、飲み始めると、毎日飲みたくなる。アルコール中毒に片足入れているかもしれない。

 今夜は、白ワインを2杯、赤一杯、気分が悪くなってきている。

ナッツを全部食べて、食事も全て食べ、デザートのアイスクリームまで。首の上まで、食べたものが残っている。

 こんなに、食べて、飲めたのには、わけがある。

ビデオを借りて、音楽を聴いているから。カナディアン、テノールの12曲を聴き、至福の時間、ワインもアイスクリームも、ぴったり。

 酒に酔い、音楽にも酔い、ダブルで。今は、カルメンを聴きながら、ブログを書いている。ニューヨークに戻ると、もう時間は少ない。

メトロポリタン美術館には、年会費を60ドル払って、一度しか行ってない。お土産を買う時間も惜しまれる。夜中に戻り、翌朝の疲れがどのくらいか。

 休むようにしているので、また一日、出て行けないかもしれない。

 ニューヨークにだけ、のんびりしたいけれど、息子だけのアパートではないから、お邪魔虫にならないよう、気を遣う。

マイルも足らないので、ラスベガスとロスに往復することにした。

これは、限界。ヨーロッパに行くと、行きたい所が一杯だけど、いつもパリのアパートで過ごしてしまう。気楽だし、おっくうになるから。飛行機に乗っていると、後で疲れがわかる。

唇は渇いている。皮膚も乾燥して渇いている。日本に帰りたくなっている。

あの単調で、何もない生活。寂しくて、孤独な家に、今は帰りたくなっている。

疲れを休める場所に。

音楽は、又、カナディアンのアダージョ。彼らの声が、優しく包んでくれる。

泣けてくる。どこにも行き着く場所のない身だということに、泣けてくる。音楽が美しすぎて、泣けてくる。

行き着く果ては、誰も、同じなのだけれど、それはわかっているつもりだけど、寂しくて、寂しすぎて、泣けてくる。

飛行時間は、あと2時間を残している。

旅に出るのは何故?

日本にいると、寂しいから

旅にいて感じるのは?

寄る辺なき、寂しさ

デラシネ、あなたが好きな

デラシネ、あなたそのもの

あなたの酒は、泣き上戸なのですね。

泣いている私を、見つめている私が言う。

そう、酔っていると、辛すぎて、

かわいそうな私と 私が