フェアウェル

フェアウェル

http://www.farewell-movie.jp/

 1981年ハルから82年の秋まで18ヶ月間、フェアウェル文書がDST(フランス国土監視局)に送った機密文書は、およそ4000通と言われている。

 プレジネフ政権下のソビエト連邦で起こった、20世紀最大のスパイ事件を、「戦場のアリア」の監督、クリスチャン、アリオンが、事実を元にして映画化した。

 映画の中で、レーガン大統領、ミッテラン首相、ゴルバチョフに扮した俳優は、似た人が起用されている。手に汗、握る白熱した作品に出来上がっている。

ソビエト連邦一党独裁政権下のKGBに所属しているグレゴリー大佐が、フェアウェル、という暗号名で、フランスに機密文書を送り続ける。その橋渡しは、民間人のフランス人技師、ピエール。

ピエールを動かしたものは、グレゴリー大佐の、祖国への愛、息子への愛、自由平等な社会の実現への希望と信念だった。

父親は、これほど息子を愛しているものなのか、と改めて思わされる。

日本では、息子は母親、娘は父親との愛情関係を取り上げられることが多いけれど、アメリカ映画では「海辺の家」「普通の人々」など、父親と息子との、葛藤と愛情をテーマにしたものが、思い起こされる。

この映画の中でも、父親と息子が、面会室の扉が閉まろうとする瞬間に、飛び出して息子を抱きしめるシーンは、もっとも心を打つシーンだ。

父と息子は、日常の生活の中で、ほとんど会話がない。父の干渉を嫌う息子に、父親は理解しよう、好かれようと努力するが、疎まれる。父が命をかけて、息子の未来を守ろうとしていたことを知った、息子は、父の愛の深さに気づく。

父親は、それで十分満足なのだ。息子を「、自由、平等、博愛 」の世界に 届けることへの希望がある。

 人間は、希望の内に生きることが出来る。信ずるより所によって、行動を促される。

人間を描く、フランス映画らしい作品で、見応えのある、秀作だと、私の感想です。