母をその気にさせるのは、タイミング

 

 

これからお世話になる、ホームドクターとの面会時間を4時だと思い込んでいて、すでに医者は帰った後だった。

 毎週、往診があるので、来週にもういちど予約を取ってもらった。

母はダイニングで、お隣の部屋の婦人と話をしていた。

前日は、昼食後、部屋に引きこもり、おやつの時間に、誘っても、仕事があるから、と断られました、と係の人が言う。

 部屋に行くと、どこかに出かけるので、待っているのだという。皆、沢山の人が集まる

 どこのことを言っているのかは、わからないけれど、お三時に、お迎えが来るのを待っているのかもしれない。タイミングが問題なのだ。物事がスムーズに行ったり、気分が乗らなかったり。今断っても、1分先には、そのことを忘れている。

 おやつはまだなので、部屋に運んでもらい、私が持って行った、どら焼きを食べてもらった。そこにお風呂のお迎えが。

 お風呂は週に2回なので、一度逃すと、1週間入れなくなる。母はいつも、入るのを嫌がって、断るのだが、一旦入ると、風呂好きの長風呂。気持ちが良かったわ、という結果になる。

 皆さん、ほとんどそうです、とホーム長さん。一階にある、風呂場まで一緒に行き、私はそのまま帰った。

 

 翌日は、一転して、お三時の後に、ダイニングで楽しそうに話をしている。

ホーム長が、

「お昼の後は、部屋でくつろがれたいようです。部屋の片付けなどされているようです。」 タンスの中を整理したり、部屋のゴミを拾ったり。

母は隣のご婦人とテーブルに座って、笑いながら、話をしていた。ダイニングには、いつも何人かの婦人が、介護士と一緒に、或いは一人で座っている。広い窓から、山の斜面状に、紫陽花の木が群生をなし、日の光が、屋外のテーブルセットの辺りを明るく照らしている。両面が透明な窓になっているので、部屋にいても開放感がある。

まだ、夕食には、2時間ほどあるので、母を車に乗せて、西宮ガーデンズに。カリモクの店で、、椅子の座り心地を試してもらうため。

 以前に母が好きだった、カリモク。しっかりした造りで、コンパクトで良いかな、と思った。母は

「座る心地は良いけど、頭が、」と。

頭も乗せられる椅子がよいらしい。椅子が少し低いので、立ち上がるのに、力がいる。 ホームで借りている、椅子の方が、小さくて、高さもよい。場所を取らず、運ぶのも楽だ。

 身体の為には、ソファーは良くない、とリハビリの専門家から聞いたことがある。沈み込むのは良くない。膝に負担がかかるものも。ホームの所々に置いている椅子は、そういうことを考えて、選択されたものかも。