吉田さんのお墓参り

 

朝食にサラダとパン、日本でも私の定番だけど、こちらでは、生ハムなんて贅沢なものもつけて。パルマの生ハムは、日本でも売っているけれど、朝食につけられるほど安価ではない。

 

パリは、晴天で汗ばむほど。

アパートの時計は、大きいのが電池切れなのか、止まっていて、目覚まし時計は、夏時間まえの設定で、1時間、遅れていた。

第一に、吉田さんのお墓参りに行きたかった。午後3時を過ぎて、出かけた。

一週間のパスを買えば、地下鉄に自由に乗れるのだけど、今回は、一日フリーチケットか、回数券を買うことになる。回数券を買うと、できるだけ歩くようになるので、健康にはよい方法。

息子と去年歩いてお墓まで行ったので、行き方はわかっていた。

プラスイタリーでは、古本市が出ている。飛行機の中で、ある大学教授が、パリの古書市場について書いていた。その中に、吉田さんのアパートから近い、古本市場が出ていた。古書愛好家は、パリの古本市で、おもいがけない出物を探し出すことが醍醐味のようだ。仕事に使うから、必需品だし、目利きが効くには、それだけの知識が必要だから。古書でなくても、アンティークの陶器、ガラスなども、知識がないと。

歩いて30分くらいかなと思っていたら、結構かかった。お墓についたのは、4時20分くらい。

白菊を買って行くと、枯れた白バラの束が4つ、お墓に供えてあった。いつごろこられたのだろうか。すぐに枯れてしまうのだろう。

 吉田さんは、お墓にくると、お墓の中の人達がおしゃべりするのが聞こえてくると言われていた。私にも聞こえないかしら。何も。

 釈蒼空、という戒名が、お墓に彫られている。吉田さんが、生前決めたもの。奥様の葬儀で、墓石に彫られたもの。

 今日は雲一つなく、青空が広がっている。カラスが一羽、墓石に止まった。

蜂が飛んできて、墓石の周りの花に止まった。

もしかしたら、吉田さんかしら。 

 墓石の下に、吉田さんが、奥様と仲良く眠っておられるから、きっとお幸せなのだろう。

 他の墓にも、夫婦が深く愛し合っていた証のように、言葉や生前の写真が飾ってある。夫婦というのは、生前は、そう愛し合っていなくても、死ぬと絶対な愛に変わるのかも。形によって、一つになることで。

花で埋め尽くされたお墓、お葬式か、記念日かのか

 マルグリット、デュラスのお墓に寄ってから、モンパルナスの墓地を出た。入り口の地図を見て、

お墓参りをする観光客が、モーパッサンやザッキンの名前を見つけて、声を出していた。