志茂田景樹

 

 タマによく似た猫

ユニクロで買った、超軽いダウンと、ヒートテックのとっくりセーターは、結局、また持って帰ることになった。 空気ベッドの寒さから、守ってくれた。置いて帰ろうかと思ったけれど、私が着てみると、着れなくもない。

「ね、もう一度着てみたら。この色、宣伝に出てて、人気あるのよ。」

 「6千円で買ったんだろ。パタゴニアでも、こういうの作っているよ。300ドルらいするけど。」

パタゴニアとは、LLビーンの高級品といったような、スポーツ用のウェアーを造っているメーカー。東海岸の北の方は、冬のスポーツのメッカで、防寒用のスポーツ服は人気ブランド。日本のミズノのようなもので、私が買って愛用しているミズノの超軽いポータブルダウンの方が、先に発売されたのだと思う。パタゴニアは、しっかりつくられているけれど、結構目方があるので、私は合わない。若い人達は、スタイルとブランドに凝るから、パタロニアが人気。

 息子が、なんだかんだ言いながら、着てみる。鏡を覗いて、笑いだした。

志茂田景樹、みたいや」

タイツをはいて、バレリーナまがいの変な服装をして話題になった、作家だ。

グレコ「トレド」

 私も思わず、吹き出してしまった。ほんと、そんな感じ。 これはやはり、彼がいやがるのも無理はない。

「ブログ、書きなおしておいてよ。僕が悪いように書かれているけど、これは着れないよ。おかしすぎる。」

 横から、ガールフレンドが、

「若い子には似合うのでしょうね。」

 スマートで細い、可愛い少年のような子なら着こなせる、滅茶派手なブルー、もう息子には似合わなくなっている。

「黒なら良かったのに。」

私も黒にしようかと、大分迷ったのだけど。 とっくりセーターも、息子に似合わない。暖かいから、首を保護すると、すごくいいんですって、と言っても、似合わないものは着たくないだろう。まだ、オシャレ心は失っていない。

 「やせなきゃだめだわ。身体隠しの服ばかり選んで着ているから。」

息子に、文句言いながら、それは、そっくり、私にも当てはまる。

オシャレするって、相当に努力がいる。食べたいものは控えめに、スタイル保つの大変なんだから。息子には、お腹隠しを前提に考えないと、と反省しました。泣いて怒って、笑い転げて、買った服を再び持ち帰る、馬鹿な母親。