ブルックリンのステーキハウス「ピータールーガー」

 

ニューヨークでステーキハウスに行くのは初めて。狂牛病が出て以来、牛肉は敬遠していたから。

 ニューヨークで一番人気の、ステーキハウスは、ブルックリンにあった。ブルックリンという響きは、素敵だ。映画に良く出てくる名前。芸術家が住む町、一番印象に残っているのは、映画「ソフィーの選択」で、作家志望の青年が、ブルックリンのアパートに入って来る。その階上に、魅力的でエキセントリックなカップルが住んでいる。消し得ない、辛い過去をかかえて。残酷な現実と、現実から逃避する、創造的美的世界とが、微妙に絡み合った、美しく、悲しい物語。ブルックリンという芸術家野の町に似合っている。

 

 ステーキハウス「ピーター、ルーガー」に予約は2時40分、その前に、素敵ビアパブに案内された。煉瓦造りの倉庫をビアパブにしている。細長いベンチとテーブルが、二列に分かれて、二組づつ、並んでいる。朝から、ビールで酔いどれている人達。

「ゲイとレズの会」という大勢のパーティーが、片側のベンチを占有していた。時々、歓声をあげて、新しく入ってくる人達を、迎えて、ビアマグで乾杯してる。片側の芸術家っぽい集まりの人達は、手を叩き、声をあべて、祝っている。すっかり、ビールで酔いが回っている。

 

 ミュンフェンのビアホールを思わせる、生ビールとソーセージを焼いているキッチンカウンター。ステーキを食べに行く前なので、ビールだけで我慢。

 「ピーター、ルーガー 」は、予約がないと、まず入られない。

 インテリアは、簡単で、シンプル。お肉も、ステーキは、ステーキだけで、サイドは別に注文する。

 二人分が89ドル、それを注文して、3人で分けると、丁度良い。ケチャップ風のソースを浸けて頂く。その美味しさと言ったら。骨付きの肉で、外はこんがり、中はジューシーで、骨についた、お肉も、上質のローストビーフのよう。

 これだけ、人気なのは、当然だ。

 難点と言えば、やはり、お値段。息子は、あまり美味しかったので、ここに私を連れて来てくれたが、まだ1度しか来たことがない。気軽に行ける値段ではない。二人分で89ドルというのは、格安で、一人分のステーキは60ドル以上だから、一人で来ると100ドルにチップ20パーセントくらいは、覚悟しておかなければならない。庶民には、そうそう行ける店ではない。でも、本当に美味しかった。

「お母さんが初めて、褒めたね。」と息子が言う。そんなに、いつも文句ばかり言っているのかな。以前に、一度、タレに浸けた、あばら肉のレストランに連れていってくれた時には、頭に描いている、ステーキではなくて、文句を言ったっけ。

 ここは、文句なし。最高のステーキハウスだ。ステーキは、肉と焼き方につきる。そこに、その店独自の、ソース。

 息子は、ステーキのサイドに、生タマネギとトマトのスライスを選んだ。この野菜が、また格別に美味しい。こういう取り合わせは、初めて。素材と取り合わせも、満足。」

 

パンも最高、旨い。

 さすが、ニューヨークのステーキは、洗練されて、スマート。