雨上がりのルクサンブルグ公園

  ザッキン美術館から、ルクサンブルグ公園は、目と鼻の先だ。雨上がりなので、土が粘土のようになり、水たまりが出来ている。  平日なので、人は少ない。あちらこちらに置かれた椅子やベンチ に水滴がたまっている。でも、だから、緑が美しい。太陽が当たっている場所はすでに乾いている。公園のベンチに座って、恋人達は、周りは見えないと、熱い抱擁をかわして、一つにとけ込んでいる。公園の一角で、男達が屯している。チェスをする人々だ。  セザンヌの絵画に「チェスをする人々」とい名画がある。こういう光景を描いたのかしら、とふと思う。カメラマンが大きなカメラを熱心に彼らに向けている。  私も、と一枚撮ろうとしたら、二人でチェスをしている老人の一人が、ぎょろっと私を見たので、引っ込めた。幾組もチェスをする人々が。チェス盤の周りで、その成り行きを見ている人達も、次の順番を待っているのだろうか。それとも賭をしているのか。  緑の中に入ると、ひやっとして冷たい。太陽の中には人が集まり、森の中は、静まりかえっている。  花を美しい季節がいいなあ、こういう時期を知ってしまったからには、もう寒い、凍てつくようなパリに戻れない。秋のパリにあこがれていながら、まだその機会を持たない。きっと寂しさが、冬以上だろうな。これから寒さが身に染みるようになって、枯れていくパリは、恋も終わり、身固めをする冬までの辛い季節に違いない。