ナブコがブーイング

 

 

レストランを一人で切り盛りしている従姉妹の時間が空く時間までに、持ってきたトラベラーズチェックをお金に換えておこう。使うのは、ほとんどが生活品ばかなので、現金が必要。銀行に置いていたお金がいまはない。勧められて、投資信託を買ってしまった。 途中で赤字だというので、送金しなくてならなくなった。そういう事態になって、初めて書類に目を通す。毎月維持料に郵送料が引かれていたのがわかった。ユーロが160円だったので、日本に送金しようと思って、銀行に行った。すると20パーセントの利息が見込めるのにと強引に勧められた。欲と道連れ、応じたのは私。あれから暴落。ただフランスは、国営と同様で、保証されている。その投信も、90パーセントのギャランティがついているので、それほどの痛手にはならないようになっている。

 言葉が旨く通じないので、つい言われたようにしてしまう。「お金がこれだけいらないだろう。2年で満期だから、すぐだ、すごい利益がもらえる」乗った私が馬鹿なのよ。

本当に、そう、言い返せるほどの語学力がないと、弱みのあるものは良いようにされる。 この世の中、なんだってそうなのでは?だから、教育の大切さが叫ばれる。対等にものを言い、ディベートに勝つために、自立心を育てるために、教育が大事。

 

ところで、ナブコを使って、オペラの次の駅で降り、このあたりにあるアメリカンエキスプレスの建物を探した。建物は、ブティックに変わっていて、その近くに、エクスプレスの看板が見える。両替の事務所で,奥にカードのカウンターがあるだけ。両替事務所で、2パーセントの手数料がいるといわれて、アメリカンエクスプレス事務所、そのものを探す。以前は、そこに行けば全額換えてくれたから。ぐるぐる歩き、入り口がみつからない。 ところが、その両替所が、事務所だった。チェックは2パーセントのコミッションを取るようになっている。経営危機と財政難は、ここにも顕著に表れている。

 帰り、オペラから乗ろうとしたら、ナブコが赤ランプでブーとうなって拒絶する。これだね、と思って、前にある案内所に言うと、そこを通れと言われた。もう一度通ろうとするとまた拒否。こういう時には、だれかが通るのと一緒に入らないと入れないそうだ。

どうしてこういうことになるのか?オペラ駅は、方向駅だからだった。チケットは、紙なので、使うのに神経がいるが、このカードは、融通が利かなくて、これも不便。フランスのやることって、こういうこと。不便は当たり前なのだ。むしろ楽しんでいる。

 日本製は、故障がないから嫌われた。手のかかるものの方が楽しみも多いし、愛情も育つ。このナブコも不完全故に、愛されるのか。

 オペラ座あたりは、別名日本人通りといわれる。最近は、観光客をねらった犯罪が顕著になっていると聞いていたが、日本語によるアナウンスを初めて聞いた。

 くれぐれもお気をつけください、と言うアナウンスだった。

亡くなった吉田さんが、オペラ近くの両替所から出てきたところ、つけてきた、ひったくり目的の二人組に

コートを汚された。べったりしたものを、わざとかけて、コートを脱がせてのスリ。

 その話を聞いて、私は笑っていた。吉田さんの怒りぶりと話がなんとなくおかしかったから。その後、一緒に歩いていると、いやおうでもコートの染みが見える。その度に、おかしさがこみあげて来て、笑ってしまった。生き生きとした吉田さんの、悲しい思い出になってしまった。