大谷さん

 お彼岸なので、大谷さんに、母を案内した。毎年2回、春秋に、お盆にも、母のお供で時々お参りに行っていた。父が生存中は、息子も一緒に4人で。いつだったか、父が途中で、お腹を壊して、大変な思いをしたことがある。息子はまだ幼く、喜んでいたけれど、父は悲壮だったに違いない。

 母は足が悪く、大谷さんの坂を上がった所で下ろしてもらおうと、タクシーに乗った。ところが、今は裏側の坂道には、車は入られなくなっているという。進入禁止になったのだと。何のためにタクシーに乗ったのか。それなら、500円のバスパスで来るのと変わらない。

 

 タクシーを降りて、母と裏側の坂道を登っていく。母は先に見えていても、あそこまで行くの?と大儀そうだ。途中に出店がある。甘納豆の店で、味見をして買うつもりなので、帰りに、といって断る。いつも買う花屋により、ろうそく、線香、花を買いそろえて、本堂に。久しぶりのお参り、最近は、私が一人、母の代わりに参っている。

 以前に母が元気だった頃、車椅子でやってきたお年寄りを見て、大変だわね、と話し合っていたのに、母はまだ歩けるけれど、階段はきつくなった。長くは歩けない。

 

 階段をよけ、坂道を下ると、再び甘納豆の 出店を通らばければならない。母は、5袋千円の甘納豆を買った。以前は、塩昆布の店で必ず買い物えをしていたが、味見をして、辛いから、とやめた。嗜好が変わっている。

 500円パスを買い、どこでも良いからバスに乗ることにした。

熊の神社という場所で降りる。バス停の前のブティックに、立ち止まり、その店でしきりに物色。千円と2千円の品がワゴンとハンガーにかかっている。千円のものはよくないが、2千円のセーターは上質だった。母は千円のセーターをかうつもりでいたが、私が反対した。店の主人が出てきて、私の言うとおり、そちらは勧められません。2千円の、これはとても良いものですよ、と。そこにバスが来たので、あきらめて飛び乗ったら、母はその店が気になって、もうちど行きたいよう。北山植物園で降り、鴨川を歩いて、しばらく歩く。

そこからまたバスに乗り、乗り換えて、やっと熊野神社前に。そのブティックにたどり着くと、すでにシャッターが閉まっている。まだ5時なのに。母はがっかりして、呼び鈴を押しても、と名残惜しそう。

 さすがにその勇気はない。あきらめざるをえない。確かに、良質のものを安く売る店で店主も感じよかった。欲もなさそう、5時にシャッターを下ろすのだから。

 トイレに行きたいのを我慢していたので、もう限界。隣に、からふね屋という見覚えのあるコーヒー店がある。裏側にもあったから、と母を歩かせて行ってみる。裏側の店の方が安そうだから。