ビルマの竪琴

  

 日本映画チャンネルで、市川監督の「ビルマの竪琴」を放映している。黒白の1956年公開作品とと、

1985年のカラーのリメイク映画を、2本同時に、放映しているのを見ると、

以前に思っていた感覚とは違った。

56年の白黒作品の印象が強かっただけに、リメイクの映画に馴染めなかったけれど、

今回改めて見比べると、2作目の方が良いと評価できる。

水島役の、安井昌治は、肉付きが良すぎて健康そのもの、中井喜一の方が、遙かに適役だ。

指揮官を演じている、三国蓮太郎と、石坂浩二を比べても、軍配は石坂に。

三国の方は、冷静沈着、せりふも淡々としているが、石坂は、人道的で暖かい人柄が

にじみ出ていて、せりふにも、人間的な暖かさに満ちている。

言葉の一つ一つをとても大切にし、その場に一番ふさわしい語り口で、涙を誘う。

一方、水島役の中井喜一は、ほとんどせりふがなく、身体で表現する役所を、

スリムで日に焼けた身体で、ひょうきんで身軽な人間から、苦悩し、修行僧になり、

仏陀のような顔つきになっていく過程の演技が、完璧だ。

 ビルマの戦死者の魂を象徴する赤いルビー、ビルマの赤い大地の色、カラーで撮りたいという

市川監督、この映画を大切にし、もう一度完璧な形に撮り直したかった想いが伝わってくる。

 テーマソング「埴生の宿」は私の好きな歌、イギリス兵に取り囲まれて、日本兵達が戦闘の身支度をしながら歌うこの歌に、イギリス兵達が故郷を思いながら、埴生の宿を合唱するシーンがある。「戦場のメリークリスマス」という映画で、大島渚監督は、このシーンから着想したのではないか、と思われた。