ボルベール(帰郷)
主演のペネロペ、クルスが演じる、ライムンダが、映画の中で歌う「ボンベール」という歌は、哀愁を秘めながらも、女の激しい情念がこめられていて、素晴らしかった。
ラ、マンチャの男と言えば、ドンキ、ホーテがすぐに思い浮かぶ。見果てぬ夢を追って、
想像力の世界を彷徨する騎士。この映画の故郷ラ、マンチャの人々は、お葬式には村中の人々が参加して、死んだはずの人間が、現実の世界に舞い戻るという架空の話を、いとも簡単に信じてしまう信心深い人びとで、自分の入る棺を選んで、お墓を磨き、入るのを楽しみにしている。
義理の父親が娘を犯すというのは、スペインに限らないが、この映画では、隠されて、陰鬱なイメージはなく、むしろ、屈せず、逞しく生きる女性賛歌の映画になっている。
闘牛のお国柄か、血を流すのは好きなようで、刃物で突かれて殺された夫の始末をする場面は、これほどの血が流れるものだろうかと思うくらい、多量の血をライムンダが、真っ白なタオルやシーツを使って引き取り、血の床をふくモップもバケツも血に染めている。
殺人に関しても、復讐、報復の正当性を主張していて、法に縛られない自由がある。
ジプシーの血が流れていて、カルメンやアルルの女、エスメラルダにも、共通する、女達に通ずるものがあるように思われる。
内容は、映画をどうぞ。