川端康成「日も月も」

  オーランジュ美術館からルノアール

 実家の本箱にあった、川端康成の「日も月も」という題の古い文庫を読んだことを思い出した。川端康成の小説は好きなので、ふと見つけた文庫を手に取ると、仮名遣いが古く、時代を感じさせた。

 その中で、特に興味を惹いたのはブリジストン美術館についての描写だった。日本橋の雑多な中にあって、そこは別世界。疲れを休めに立ち寄る場所として描かれている。好きな一点の絵画を見ながらしばし時間を過ごす。なんて優雅で贅沢な時間だろうと思われた。

 

私はそれまでブリジストン美術館を訪れたことはなかった。東京に行く機会もほとんどなかったし、東京に行きたいという気持ちも抱いたこともなかったのに、「日も月も」を読んで以来、東京に是非行ってみたい、行けば、ブリジストン美術館に、と思うようになった。以来、何度か東京に行く機会がある度に、必ずブリジストン美術館に立ち寄ることにしている。ゆったりとした皮のソファーが置いてあり、そこに身を沈めて絵画を見る。まるでリビングに名画を飾っているように。

今はないが、半蔵門にあったダイヤモンドホテルに、名バーテンダーがいた。マンダリン系のホテルだった。夕方のハッピーアワーの時間にそこで少し飲んでから夕食に出かけるのが常だった。カクテルも、作る人で随分違う。そのバーテンダーのお弟子さんだったという女性はコンクールで優勝したとか言っていたが、その後、新しく出来た、ストリングホテルで活躍しているとか。半蔵門の近くにイギリス大使館があり、歩いて歌舞伎の国立劇場にも行ける。皇居の周りを散策しながら銀座まで歩いて出かけた。足が疲れて、ブリジストン美術館に。

山種美術館にも歩いて行ける距離にある。春は桜が満開になる。ダイヤモンドホテルは、今は建て替えられて、別の名前になったが、まだそこには行ったことがない。