「こわれゆく世界の中で」母の日にちなんで

  松野真理作 

http://homepage3.nifty.com/marimatsuno/

http://www.movies.co.jp/breakingandentering/

 昨夜見た「こわれゆく世界の中で」という映画、偶然にも、「母の日」にふさわしいテーマだ。私は今、ジュー、ド、ローにはまっている。最近立て続けに3本見ている。彼は今、一番忙しいスターかも。彼の魅力を一言でいうと、「孤独な憂いをおびて」いる所かな。「ホリデー」では、妻に死なれて、二人の娘を育てている父親を演じていた。「こわれゆく世界の中で」では、一緒に長年住み、父親になろうとしながら、母娘の密接な関係から、いつも疎外感を感じて来た、恋人を演じている。彼の恋人は、自分の娘が、彼の子供ではない、ということで彼に負い目をいつも感じてきた。彼の方は、母と娘の世界から、遠くにいるという孤独感から、愛を他に求める。その相手の女性「ジュリエット、ビノシュ」は、セルビア人の夫を残し、息子とアメリカに逃げてきた女性、彼女はイスラム系だったので、出国出来たのだ。浮気していた夫はセルビアで殺され、息子はロンドンで,父の弟達が、彼のオフィスから盗む手伝いをした。3度目の盗みを企てた夜、息子を追って、つきとめた彼は、アパートに入るために、仕立物の直しを頼みに行く。

松野真理作

 

彼はその母親に魅せられ、愛を求める。息子の犯罪を赦してもらおうと思った母親は、彼の求めに応じて、ベッドを共にし、その証拠写真を友人に撮らせた。偽りから、愛情に変化した母親は、彼に告白して、フィルムを返す。

 、彼は再び「母と息子」との強い絆から、阻害されていたという孤独感に。彼は、その母親との関係を恋人に告白し、協力してもらってその親子を助ける。

 

 この映画で彼の仕事仲間が「法は守るもの。法を犯したものは刑務所に行くのが当然」と考えているのに、刑事は「法を犯さない人間はいない。」というくだり。

 マルグリットデュラスが「母親の子供に対する愛は犯罪に値する。」と言ったことを思い出す。法は、明るみに出され、愛、犯罪は闇に包まれている。母親は、子供を必死でかばおうとする。犯罪を隠そうとする。この映画で、「愛」をテーマに、わかりやすい「母親の愛」を持ってくることで、男女の間の疎外感、孤独感、男と女の、バラバラな関係を描こうとしている。寂しいから、孤独だから、離れられない、一緒に暮らして行こうとする男と女の関係を。愛を求める「愛が欠けている」関係を。