ジャクリーンのアトリエ

 木曜日

 ジャクリーンから昨夜電話があり、今日の3時に彼女の別のアトリエに来ないかと誘いを受けた。

6時までなら、ということで約束。アパートの傍まで彼女が来てくれた。アパートに上がってもらい、お茶でもと言ったが、急いでアトリエに行きたいからと言われて、バスに乗る。ジャクリーンの亡くなったご主人のアトリエを見せてもらった。大きくて、採光も広い。ご主人の作品を世に出すべく、彼女の友人と奮闘中とか。絵画とステンドグラスを作っていた。発想がユニークな作品だ。

 紅茶を入れ、持って行ったマカロンでお茶をし、ジャクリーンの叔父さんが、メキシコの油田で働いていた頃の写真を見せてもらった。今朝、ジャクリーンが住んでいるアトリエにやってきたという画商が、ここにもやってきて、横柄に絵を引っ張り出し、こういう絵は興味ない、美術館に入っているようなのはないか、と尋ね、ご主人の若い頃の作品を見て、2,3枚気に入ったものの内で一つを選び携帯電話で誰かに電話をして、勝手に値段をつけて買いたいと申し出た。ジャクリーンは即座にノーと断った。そんなお金ではとても売れない。ジャクリーンが若い頃、モデルになっている作品で、とてもよい作品だ。画商は私に、50年代の中国画はないか、と聞くので、

私は興味がない、とつっけんどんに言った。

近くにあるジャクリーンの小さいアトリエにも案内した。ぐるっと見回して、忙しそうに帰って行った。

ジャクリーンは、アトリエに入ると、ミュージックをかけ、作品のライトをつけた。どれもロマンティックでやさしい作品。

その男の横柄さ。絵を無理に引っ張りだしたので、ジャクリーンは直すのに時間がかかり大変だった。