アルル

  アルル

 

マルセイユから、アルルまで快速で40分、ローカルで50分くらいの時間で行ける。列車は、時間と、種類に寄って、割引があるので、値段が違う。3時と3時10分発の違いで、6ユーロほど違うので、後に決めた。最初の車両に乗ると、8人かけの席で、扉もついている車両なので、間の席を倒して、息子はごろんと横になった。時間が来ても列車は動かない。10分遅れで動き出した。警官が4人乗り込んできて、廊下に立っている。事件なのかしら。でもなさよう、無賃乗車の現行犯をつかまえるつもりなのか?私達の部屋を覗いて、笑っている。次の駅で、どこかに消えていった。

 アルルに着くと、以前に泊まったことのある、「ホテル、ド、ミュゼー」を探して、川沿いを歩いた。

川辺は、風が強くてとても寒い。ダウンを着ていても寒いのに、息子は、ジーパンの下には何もはいていないから、マルセイユから、寒さにねを上げている。やっとホテルに入り、部屋が空いているかと聞くと、ウイ。そうだろう、がらんとした感じ。私がシャワーつき55ユーロで、というと息子は、ここは自分が払うから風呂付の65ユーロに決めた。要求されたクレジットカードを出すと、若主人の奥さんがカードの番号を控えてから、アメリカンエクスプレスは使えないから、ヴィザかマスターはないかというので、私のカードを出したら、その番号を控えた。部屋に入ると、テーブルの上に、アメリカンエクスペレスマークのカードが置いてある。息子は、使えないといいながら、先にカードの番号を控えたことがおかしい、悪用されるというケースもあると心配した。部屋をキャンセルしたいというので、受付に行き、部屋が気に入らないから、と言うと、部屋を変えるというので、キャンセルしたい言った。奥から、このホテルのオーナーのおばあさんが出てきて、何故だ、と不服そう。主人は、部屋をチエックしに上がり、何も使ってないこと確かめた。控えたカードの紙を返してもらい、そこを出た。川沿いは避けて、町の中に入ると、「ホテル、ダ、アルタン」が見えた。このホテルは、三ツ星で値段も高いはず。キャンセルした「ミュゼー」は64ユーロだった。

ロビー

ホテルの中庭

 中に入って、まず、ボンマルシェはないか、と尋ねた。受付の女性は、85ユーロで、一階の中庭に面した部屋があると言った。私は80ユーロでは?と言うと、オーケーだと言ってくれた。名前を紙に書くだけで、カードも何も要求なし。これが普通だ、と彼は言う。

 このホテルは、7月の写真祭の会場になっていて、有名な批評家が、世界各地から写真家への登竜門となるチャンスを求めてやってくる写真家達の作品を批評してくれる。以前に、写真家の車に便乗して、初めてアルルに来た時に、このホテルに入った事があった。季節の良い時期には、毎日満室のホテルだが、今は客もほとんどいないので、ボンマルシェ(特別料金)にしてくれた。

 

アルルの街中を歩くにも、寒くて長くは歩けない。コロシアムの上の方に、アルルを見下ろせる高台があるので、そこまで行った。アルルの城内を歩いて、ビールが飲みたいというので、カフェを探して歩くと、「カフェ、デュ、ニュイ」があった。私はアルルに5度目だけれど、まだこの有名なカフェに入った事がない。最近雑誌「家庭画報」で、岸恵子が案内する、ゴッホとマネのたどった場所とういうのに、彼女が「カフェ、デュ、ニュイ」の奥に座っている写真が掲載されていた。

 シーズンには、前のテラスはいつも満席になるのに、平日の今日はひっそり、中に、客のカップルが一組だけ。プレッソン(ドラフトビール)の種類は一つだけなので、それを頼む。奥のレストラン席に、ゴッホの絵が3枚かかっている。2枚の絵は同じ絵で、一つに不気味なカラスが3羽描いている。違いを聞くと、店の人は、「どれも絵だ。」というだけで知らない。

 英語を話さない人ばかりだ、と息子が驚く。一流のホテルなのに、案内書に間違いを見つけたり。音楽を聴きながら、もう一杯、もう一杯と飲むので、ストップをかけた。ビールを飲み始めると止まらない。スーパーまで歩いて、今夜のビールを買って一度はホテルに帰った。もう一本空けた所で、私がビールの合併症の怖さを話す。彼はそういうことを充分承知で、ビールが好きでやめられないらしい。

空けたビールは、ほとんど飲まずに放置していて、翌朝捨てた。

 夕食のレストランは、家族で経営にている小さな店に行くことに決めていた。前に来た時に、偶然入って、その美味しさに感激した店だった。7時半から9時半までの営業で、昨日と、今日のお昼は休みだった。8時半に入ると、二階の席は、3組の客が座っていた。

 ミッシェルで食べたブイヤベースがすごかったので、お腹が空いていない。28ユーロと21ユーロのメニュがあり、軽いだろうと21ユーロにした。ワインは、アルル産の一番安い15ユーロ。ローヌ川沿いに出来る、コテ、ド、ローヌの一つ。

 最初に、小さな魚とハーブのムースが出された。これは、前にも食べたので、誰にでも出されるもの。美味しい。前菜に、息子はテリーヌ、私は野菜のテリーヌ、メインは、二人とも魚、もう一つのメインは鴨のオレンジソース、フランス料理の定番だけれど、重そうなので。

 その美味しさに、息子は感激、お腹が空いていなかったはずなのに、違和感なく、皆平らげた。

デザートには、息子はチョコレートムース、私は、いつものように、プリンの上に、お砂糖をかけて、バーナーで焦げ目をつけた「ブリュレ、ド、カラメル」を頼んだ。溶けるような感触に、大、大、大の満足でした。

パリなら、これくらいの美味しい店だと、70ユーロとか100ユーロとかするでしょうね。

 家族で、自分の家でやってるので、ここはとても安くて、素晴らしいお料理を出している。地方には、安くて、一流のシェフの料理を味わえる店がある。階下でお父さんと一緒に、キッチンに入っている息子と、階乗で、お母さんと一緒に、サービスを受け持ってる息子さん達。きっとパリに行きたがってるよ、と私の息子が言う。若者の気持ちを思いやる。夜は一段と冷え、寒いので 夜のライトアップも見ないで、ホテルに戻った。

 翌朝、ホテルの朝食はコンチネンタル9ユーロなので、外に出る。「カフェ、デュ、ニュイ」は閉まっていて、隣のバーに一人の客がいた。朝食は5ユーロ、息子はオムレツが食べたかったので、それも頼む。カウンターに中にいる人の顔が、写真の闘牛士の顔とそっくりだ、と息子が言った。マタドールだった店の写真が、あちらこちらに貼ってある。闘牛士の衣装も飾っている。12,3歳のなりたての頃のポートレートなど。町の人達が入ってきて、コーヒーを注文して、新聞を読んでいる。大きなオムレツに、サラダとジャガイモのフライが乗っている。息子はここで、フランスに来て初めてクロワッサンを食べた。

  カフェ、オ、レ、クロワッサン、バケット、オレンジジュース、で5ユーロの朝食2人分、私のコーヒー追加と、オムレツで20ユーロだった。

 マルセイユまで、戻り、それからパリに帰るのは無駄だから、チケットの時間を変えてもらおうと息子は言う。変えられないし、払い戻しも出来ないチケットだから、といっても、アメリカでは、そういうチケットでも空いていれば乗せてくれる、という。ここはフランス、融通はきかない。アルルからTGVが、出るのに、マルセイユまで戻って、予約した時間まで、駅のカフェで時間を潰し、パリに戻るのは夕方の5時半、パリでの貴重な一日が消えると、息子は不満顔。自分で計画たてて、チケットも買ってくればいい、ご不満ならね。