モンパルナス墓地

モンパルナスの墓地に行った。私がパリに来てから、晴天つづきで、こんなことはめずらしいのだという。昼間は、暖かく、セーターでも充分なくらい。桜の木は、満開に近いのもあるくらい。

 モンパルナスは、昔は、一軒屋も多く、パリでは、田舎だった。日本で良く知られている、「バーパ、パパ」を書いている、アメリカ人の絵本作家の家を訪ねた事がある。路地を入った、平屋だての家だった。モンパルナス界隈に住んでいた芸術達は、そこを立ち退かされ、パリ市が新しく建設したアパートなどに移った。今、モンパルナスは、巨大な建物が立ち並び、新しい駅が出来て、近代的な都市空間を作っている。その中の一角に、そこだけは、時代を超えて、静かに眠っている空間がモンパリナス墓地だ。

 サンジェルマン、デ、プレレから、モンパルナスのカフェで、夜を徹して、熱い議論を交わした知識人や、芸術家達は、モンパルナスの墓地に眠っている。サルトルとボーボワールは、お墓の入り口の近くにあり、墓碑がたっていた。どこかのユースホステルで一緒になった女性が、マルグリリット、デュラスのお墓を見に行った、と言っていたのを思い出した。デュラスは、アパートをサンジャルマン、デ、プレに持っていたので、モンパルナス墓地ではないか、と聞いてみると、やはりそうだった。デュラスのお墓は、簡素なもので、随分前に、訪れた人が供えた、1輪のバラが枯れた状態で、墓石の上に。小さな石や、ビー玉、韓国語で書かれた一筆なのが、置かれていた。墓石に刻まれた名前も、見落とすほど。

 彫刻を施した立派なものや、家族で、という大き目のお墓もある。花鉢が一杯の華やかな墓もあれば、アイルランド、出身のノーベル賞作家、サムエル、ベケットの墓は、大理石の墓石だけで花は一切なくシンプルなものだった。ベケットも、モンパルナスに住んでいたらしい。

 最低2メートルは掘るので、墓堀は機械を使う。深いのだと、10メートルも掘るのもあるらしい。

 今日も、掘り出した土と瓦礫が、墓所の道路わきに積まれていた。のどかで、ゆったりとした、場所で、横たわっている墓所、眠っているという表現はそのままの状態を表している。

 ベケットは、今、私がしげく通っているポンピドーセンターで、特別展が開催されている。