森の中に

  ヴァンセンヌの森と、反対側に位置する森はブーローニュの森、そのどちらでもない、

ボームの森に行った。ベルサイユ行きの電車が通っていたので、ベルサイユに近いのだろう。

お天気が良かったので、森に車で来ている人達が、池を囲むベンチに座っていた。釣りを楽しむ人の姿もちらほら。ほとんどお年寄りのカップルだ。近くに2つの大きな住宅地が出来ているので、バスの本数は多くなっているけれど、パリの市内のようにはいかない。森の中に入ると、去年の風で倒れた木の根を切り落とした株があちらこちらにあり、そこから芽が出て、前衛生花のように芸術的な形をしているものもある。秋には、栗広いにやってくるので、栗の木が多く、足元に、落ちた栗が沢山残っている。

 男の子が二人、トリフを探しているのだろう。探知機のような、丸い先をつけた棒を、茂みあて、肩に機械をかついで辺りを探って歩いている。

 森の中を分け入り、形のいい木や、石を拾って歩いたら、時間が経つのも忘れていた。2時間くらい森の中を歩いて、拾った戦利品を持って帰った。日本にはない、いろいろな石がある。あめ色に透明がかったもの、ブルーの色の入った石、茶褐色の石、など、石そのものが、小さな石の彫刻によう。少し大きくて、色のない石は、アトリエで、色を塗ると、彫刻になる。木を彫刻刀で削って、ペーパーでこすり、そこに色を塗る。遊びなのだが、時間と労力を費やし、手を加えるとで、自然と人間のコラボレーションになる。芸術家のアイデアはつきない。変凡な頭しか持ちアあせていない私は、ただただ、感心するのみ。帰りのバスの中から、エッフェル塔と、自由の女神が見えた。

そう、アポリネールの詩「ミラボー橋」で知られている、ミラボー橋が見える。

 「ミラボー橋の下を、セーヌが流れる」という詩の、ミラボー橋。下に流れているのは、セーヌ川

フランスがアメリカに自由の女神を贈ったお返しに、アメリカから贈られた、小さな自由の女神像の、

向こうに、エッフェル塔が見えた。エッフェル塔は、今はパリになくてはならないほど、パリの景色に

合っている。エッフェル塔が美しいのは、下が、円形にくりぬかれた形で、空間を作っているから。