ウィンター・ソング

 久しく買ったことのなかった映画のパンフレットを買ってしまった。以前は、心に残る映画は、パンフレットを買っていたけれど、最近は買わなくなった。ウィンターソングは、久々に出会った、素晴らしい作品だと私は思う。期待していなかった偶然の出会いで、より感動したのかしら。全くの予備知識なしに入ったら、ミュージカル仕立ての映画だった。

雪の上海、バスの中に、天使がいる。

「人生は映画そのもの。人はみな映画の主役。。。。。。私はカットされた多くのシーンを集めている。

カットされたシーンを、また必要になった時に戻してあげるために。今も、あるシーンを戻すためにここに来た。」

ミュージカルシーンの中の、女は、記憶を喪失して、サーカスの空中ブランコ乗り。彼女を探してやってきた青年と、彼女を操るサーカス団の団長、彼らを演ずる3人には、カットされた、実際の過去の物語がある。劇中劇の中にしか、現れてこない、二人の恋物語が。その愛が、ミュージカルを演じる二人の心を通じて、蘇って行く。

10年前に、凍てつく北京で巡りあった、貧しく若い恋、男は思い続け、女は、男を捨て、過去を捨てて、女優として活躍している。彼女は、彼の友人だった監督の今は女。10年思い続けた彼も香港の映画俳優になり、監督のミュージカル映画に出演するために上海にやってきた。映画は、過去の恋の経過と、劇中劇の3人の物語との、二重仕立てで展開していく。

 ムーランルージュを思わせる作品、と評する人がいるが、私は、「オペラ座の怪人」の中の、怪人の切ない恋心を歌った歌が聞こえてくるようだった。

ジャッキー・チュン(Nie Wen)の歌が素晴らしく、彼が演じる監督が、自ら劇中劇のサーカス団の団長が、まさにオペラ座の怪人を思い起こさせる。

金城武(リン・ジェントン)が恋人役に、「小さな中国のお針子」のジョウ・シュンが、女優(スン・ナー)を演じている。チャングムの恋人を演じたチ・ジニが天使の役で、時々、いろんな役になって出てくる。なんとなくチ・ジニに似ている、と思って見ていたら、やはり。

オペラ座の怪人を、ニューヨークで見て、ものすごく感激していたから、それがどうしても乗り移っているのかも。「ラブ・ソング」のピーター・チェン監督が、9年ぶりに手がけた作品とか。新しいスタイルのミュージカル映画。出演者の歌も、演技も素晴らしかった。映像のシーンの美しさ。一押しの作品です。