読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

海よりもまだ深く

是枝監督の話題作、海よりもまだ深く、を尼崎の映画館で観ました。

尼崎の高層住宅に住んでいる人達も、そして誰でもが、このような問題を抱えていて、諦めたり、何かを捨てたりしながら、辛うじて幸せという名の電車に乗りたい、一応はなんとか暮らしているように、自分を納得させているが、

心は、本当に望むところは、そこにはなく、海よりもまだ深く、どうしようもなく葛藤し続けているのだろう。

表面的に拒絶し、反発し、希薄に、遠ざかって暮らせても、心は深く深く、どうしようもなく深く、愛したい、愛されたい、それが人間の性、本質なのだ。

是枝監督の作品は、人が生きていく悲しさを伴ったいとしさを、淡々と静かにさりげなく表現するのが見事。

バックグラウンドの音楽がまた良い。生活の中に溶け込んだ音楽、さりげなく存在する音の世界。

映像の美学にこだわる監督ではなく、音楽、会話や、声、風や空気、普段の生活の中の、暮らしの道具、使われ方や、生活のシミや垢までも、大切にし、そこに人間の生き様があるとする作り手だと思う。人間の暮らしが匂うもの、触れるもの、歴史。

冗談にしないと、面と向かっては向き合えない、シャイな真面目さが、映画の全面に流れている。