クロワッサンで朝食を

   

 http://www.cetera.co.jp/croissant/    

 神戸のシネリーブスで、最終日に出かけた友人から、よても良かったわ、と聞いていた映画だった。

  ビデオでも借りようかなと思ったり。 テレビで放映されないかな、と番組を見てはチェックしていたら、

  昨夜の、イマジカで、放映されることを知った。ビデオにも撮ったけれど、放映時間にも、やもたてもたまらずに。

  2012年に作られた映画で、ジャンヌモローが主演。リトアニアとフランスと共同制作の作品。

  原題は、「リトアニア女性が、パリに。」

  彼女の言う通り、心に残る映画だ。 リトアニアと言う国の背景をしる必要があるだろうが、

  パリで、自由な空気の中で、新しい生き方を見出していくのは、ジャンヌ、モローが演じる、毅然とした老婦人

  (フリーダ)がそうであり、その頑固で気位の高い、老婦人の世話をするために雇われた、リトアニアからパリに

やってくる生活に疲れ果てた女性、アンヌも、自分の新しい人生を見出していく。

  孤独な二人の女性が、反発しあいながら、互いに寄り添い、新しい家族の形態が生まれる。

 すぐ近くにある、カフェの主人は、フリーダの愛人だった男で、彼だけがフリーダを支えていた。

    フリーダと、彼とアンヌの3人のリトアニア出身の、新しい家族の形態をしさする所で終わっている。

  「アンヌ、ここはあなたの家よ。」

  老婦人のアパルトマンは、サンジェルマンあたりかな、広くて、趣味の良い高級な調度品に囲まれて、家の中でも、

  素敵な洋服、アクセサリー、髪もセット、お化粧も。毅然として、チャーミングな貴婦人のような老婦人を演ずる

ジャンヌモローが、とても魅力的だ。

  自然な老けようで、皺も深いけれど、手を加えていない美しさの満ちている。不自然な若作りをしている役者も多い

 が、自然な方がずっと良いと思わせる。

 家政婦のアンヌは、どんどん洗練されて行く。女を忘れていた女性が、もともと持っているエレガントな魅力が引き出されて

いく様も見事だ。

  

 パリの朝食は、パン屋さんで買ってくる出来立てのパンから始まる。

 私の家の周りを見渡しても、そんなパン屋さんは、ない。

 パリだと、向こう三軒にパン屋さんがあって、朝も昼も夜も、バケットを買う人が並んでいる。

 サンジェルマンの高級アパートも、エレガンスさを磨くことも、新しい家族に恵まれることも、夢物語

 だけれど、「クロワッサンで朝食を」毎朝、楽しめるくらいは出来そう。

  パリに行かなくても、やきたてのパン屋さんが近所になくても、クロワッサンで朝食は出来そう。

 そういう朝食だけれど、パリのエスプリを味わえるのでは?

  

  私だったら、紅茶ではなくて、コーヒーとクロワッサンだけど。

  老婦人がのむのは、紅茶。マリアージュの朝食用の紅茶かも。

 そう、紅茶の方が、スノッブでエレガントなイメージがあるわね。イギリス式の。

 映画の中で、リトアニアからの友人達が、20年ぶりに、アンヌに頼まれてやってくる。

 夫婦を離婚させたと非難するリトアニアの仲間。

「結婚する前には、何をしていたのか知っている。」と非難する。

 アパートから出いけと叫ぶ夫人。

  「私は彼と寝ただけなのに、いつまでも昔のことを覚えていて私を責める。」

 彼女は、娼婦だったのかもしれない。優しい金持ちの夫を得て結婚したのかも。

  自分中心に生きて来た老婦人の孤独な末路が浮き出される。

 それも、パリという町に生きる人の象徴的な姿を現している。リトアニアで、飲んだくれの主人と別れ、老人ホームで働き、

 老いた母親の介護をしていたアンヌ。母親がなくなって、虚無感に襲われていた時に、かかってきた電話は、パリでのある老婦人のお世話

 をする仕事だった。

  お互いに抱いていた、孤独と虚無を、埋め合うように、二人は互いに無二の理解者に。無二の親友に、無二の親子関係に。

  隣に人がいても、無関係に生きるパリだから、人を求めあう関係も、夢物語のように生まれるかもしれない。