玉三郎「天守物語」

  

      

  玉三郎の相手役に海老蔵を迎えての「天守物語を歌舞伎シネマとして観ました。

天守物語は、泉鏡花の作品で、映画の冒頭に、玉三郎がビロードのスーツに身を包み、

雰囲気のある洋館のリビングルームで、本を読んでる姿が映し出され、鏡花の世界を語る場面が一番好きでした。

薄い日の注ぐ、静かな部屋で、玉三郎は、泉鏡花が求めた世界と同じ、詩的世界。

美しい言葉、美しい景色、美しい声で美しい語り。美しく、純粋な世界を夢見る作家と

その世界を映しだす化身のような玉三郎

泉鏡花の美的世界は、、人間世界から、距離を隔てて現実逃避でもあるのですが、

玉三郎という人も、おそらく、浮世の付き合いからは常に距離を置き、一人遊びが性に合っている人なのでしょう。

ナルシストの極み、自分を写す鏡も備え、底の映る自分を極限にまで美しい姿で、美しい言葉で表現することに、全霊を傾けて、精進してきた人でしょう。

純粋な心、純粋で混じりけのない愛を求め、そういう愛を玉三郎は演じることで昇華させている。

その相手が、この天守物語では、歌舞伎界の貴公子と言われる海老蔵なのです。

 詩的空間の中で、詩的言語に酔う。それは夢見る世界です。

 泉鏡花の作品は、人間世界をアウトサイダー的な存在から批判し、嘆き、自然界の純粋で涼やかな愛の美を追求したものが多い。

 天守物語もその一つですが、私的には、「高野聖」の方が心に深く響いて好きです。

やはり、歌舞伎シネマで観たのですが、映画としての造り変えも優れていると思う。

 天守物語でも出演している、獅童が、修行僧に扮して、玉三郎の相手役を務めているのですが、泉鏡花の言う、涼やかな美しさを醸し出しているように思われる。

 海老蔵との共演では、「海神別荘」が良かった。

 何でも手に入れる海の底ぬ住む純粋な王子が、村一番の美しい娘を嫁に迎えるのです。

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海老蔵にうってつけの役ですし、玉三郎が世にも美しく、儚さを秘めた美女の役で、二人のバランスがとてもよく取れていた作品です。

 泉鏡花の作品を、文字の上で、じっくりと味わってみたいと思うようになったのは、

今回の玉三郎の泉文学への解説によるものですが、それと同時に、蘇る泉鏡花の真骨頂とも言える作品を思い出したわけです。

亀姫に、勘九郎{その時は勘太郎}が演じていたのですが、可愛らしい妹のような亀姫には、七之助が適役であっと思うのですが、その当時、

もしかしたら、七之助は、不祥事で歌舞伎に出られなかったのも。

 飛ぶ鳥の勢いで、怖いものしらずの海老蔵の大胆な演技が見られたのも、天守物語、海神別荘での海老蔵です。